昨年、菅井円加さんが優勝して日本中の話題をさらった「ローザンヌ国際バレエコンクール」の今年度大会が、先日2月2日で幕を閉じた。今年も日本人の若者たちが健闘、石川県能美市の高校生、山本雅也さん(18)が3位に入賞した。

ローザンヌ国際バレエコンクール、日本人が3位入賞

3位に入賞した山本雅也さんの演技〔AFPBB News

 世界的に注目を浴びる同コンクールの地元、ここスイスにも、将来バレエ界に羽ばたきたいと夢見る子供や若者はいる。

 その子供たちの間で、「奇跡的な力をつけてくれる指導者」として名前が挙がる日本人女性がいる。チューリヒに住むロッシ池上理恵子だ。

 ロッシ池上の噂はバレエ界だけではなく、フィギュアスケート界にも広まっている。ヨーロッパの超一流フィギュアスケート選手たちも、ぜひ指導してほしいと依頼してくるほどだ。ロッシ池上の指導とは、どんなものなのか。(文中敬称略)

メキメキと上達して、必ず大会で好成績を収める

スイスでバレエ教師、振付師として活躍するロッシ池上理恵子さん。趣味のバレエ(幼児から大人まで)と並行し、バレエ界を目指す次世代を多く教えている。「華やかな舞台の裏側は、本当に地道な努力の世界です」と語る(特記以外すべて筆者撮影)

 ある土曜午後のバレエのレッスンにお邪魔させてもらった。レッスンには10代の3人の生徒が来ていた。目の前で、様々なフォームを3人で一緒に取ってくれる。その一つひとつ、一人ひとりをロッシ池上は鋭いまなざしで見つめる。声をかけ、必要があれば手を添える。

 両脚を大きく開いたり、その脚を上に移動して手で持ったり、体をぐっと反らせたり。ずいぶんと柔らかな動きができる3人だが、ここまで達するにはすでに相当練習をしてきたに違いない。聞けば、やはり、みんな7年もロッシ池上に教わってきたのだという。

 最後には、1人ずつ自分の演目を披露してくれた。その間、ロッシ池上の目は、生徒の指先からつま先までの動きをとらえて逃さない。

 「とてもよくできたわ。でも、ここがもう少し」と、ミリ単位の動きの違いの美しさにこだわって、生徒に助言していた。

 ロッシ池上の練習を積んだ生徒たちは、目に見えて上達するという。そして事情があって別の指導者にかわると、生徒の技術がとたんに後退してしまう。おおやけの場で、それが如実に表れるのだそうだ。

左:今季スイス国内ジュニア選手権大会2位入賞した Fanny Dietschi 右:ジュニアグランプリ国際(NRW Trophy 2011)大会で3位入賞した Yasmin Yamada ロッシ池上さんの下には、口コミで優れた生徒たちが集まってくる

 いろいろな大会で、上位入賞者がロッシ池上の生徒たちで占められることは珍しくない。ロッシ池上のもとを離れた生徒は、何が起こったのかと驚くほどに順位を落としてしまう。

 「スイスにも、フランスやドイツにも、才能のある子供は本当にたくさんいるのです。でも、才能のある子供は残念ながら、途中でやめてしまう傾向にあります」

 「才能があるゆえに、すぐに色々とできてしまって飽きてしまうんですね。それでも向上心を持って継続すること、それは努力するということですが、それがなかなかできないのです」