経営力がまぶしい日本の市町村50選(6)
経営力がまぶしい日本の市町村、第6回は岡山県の西粟倉村を2回に分けてお送りする。初回は青木秀樹村長のインタビュー、明日は西粟倉・森の学校を運営している牧大介さんのお話をお届けしたい。
西粟倉村は岡山県の最も山深い鳥取県との県境にある。林業と農業が主な産業で、ご多分に漏れず日本が戦後復興を果たしていく過程で取り残されてきた村である。
しかし、その村がいま林業で甦ろうとしている。
西粟倉村の杉の木は日本だけでなく広く世界に知られる木材のブランドとして認知され始めたのである。背景には世界的に足りなくなった森林資源がある。最近、御神木が何者かによって枯らされるという事件があったが、良い材木が手に入りにくくなったという事情がある。
21世紀に入って始まった地球規模の発展がもたらした皮肉とでも言おうか、平地の少ない日本が放置してきた森林資源が世界的な注目を集めるようになってきたのだ。
安倍晋三首相は2月18日の産業競争力会議で農業を輸出産業にすることを目指すと発言しているが、林業も極めて成長する可能性が高い分野だと言える。西粟倉村で始まった試みが発展すれば、日本という国がまた一段と輝くに違いない。
国の合併方針に乗らず、自立して森林再生の道を歩む
川嶋 西粟倉村は、道上正寿前村長(現・森林組合長)時代の2009年から、森林再生「百年の森林構想」に取り組んでおられますね。役場が村の森林を一括管理しようというというユニークな試みですが、それはどういう経緯で始まったのですか。
青木 きっかけとしては、いわゆる「平成の大合併」で、我われは周辺の町村とは合併せず、単独でやっていくことを選んだことです。
川嶋 今となっては合併を選ばなかったのはよかったですよね。合併した自治体はあと数年で地方交付税を減らされてしまうわけで、これから塗炭の苦しみが始まりますよ。
青木 確かにそうです。ただ、当時の雰囲気からすれば、そんな地方交付税の問題はぜんぜん議論になりませんでした。
川嶋 政府は合併を進めるためにそういう説明はあまりしなかった。
青木 そうです。まず合併ありきで、いいことばかりぶら下げたわけですよ。おかしな話ですけど。その当時、私は村議会の議長でしたが、道上前村長と2人3脚で、じっくり取り組んでいました。いずれは苦しむことになるだろうなという予想がありましたから。
でも、議会や村民への説明は難しかったです。年配の人たちには国が悪いところに我われを導くはずがないという考えがありましたから、国の説明とお前らの説明のどっちを信じればいいのかと。