もし北朝鮮が崩壊したらどうなるか。同じ朝鮮民族の政権である韓国が最も正当性のある存在としてその領土を継承し、朝鮮半島の統一を図るだろうという見解が、米国の外交政策筋の間ではこれまで有力だった。
しかし、現実には中国が韓国主導の統一を許さず全面的に介入する、という見通しが新たに打ち出され、ワシントンの政府や議会に波紋を広げ始めた。
中国は朝鮮半島の北部を歴史的に中国の支配圏に帰属すると見なしており、その領土拡張の野心的姿勢は、日本の尖閣諸島を奪取しようとする試みにも共通しているという。
北朝鮮崩壊への対応は米国歴代政権の政策課題
「中国が朝鮮半島統一を阻むだろう」――こんな見出しの記事がワシントン・ポスト(1月18日付)に掲載された。
この記事は、米国上院外交委員会が2012年12月末にまとめた報告の内容を伝えるものだった。同報告は「朝鮮半島の統一への中国の影響と米国上院にとっての諸問題」と題され、北朝鮮が単に政権だけでなく国家自体が崩壊するというシナリオを仮定し、その場合の関連諸国、特に中国の対応を研究していた。同報告の主要な作成者は上院外交委員会の共和党側スタッフだが、報告自体は同委員会の公式リポートとして公表された。
米国の歴代政権が北朝鮮に対し、特に北側の核兵器開発を阻止することを最大目的として多角的な努力を続けてきたことは広く知られている。米側ではそのために官民の両方で北朝鮮の政権や政治、経済の状況を調査し、分析を続けてきた。
その多方面からの分析の中には、1つの可能性として「金政権の崩壊」あるいは「北朝鮮の国家の崩壊」が含まれてきた。
北朝鮮はカルト的な絶対支配者が独裁を振るう異様な国家である。国民は圧政に苦しめられ、人権の抑圧は非道を極める。国民の不満が爆発しても不思議はない。そのうえに政府の経済政策が頻繁に破綻する。洪水やかんばつなどの天災で飢餓が襲う。だから米国側でも「北朝鮮はやがて必ず崩壊する」という予測が繰り返し発せられてきた。