肥満大国アメリカに納豆を売り込め!

カリフォルニアで日本でも消えつつある本格手作りにこだわる

2010.06.14(Mon) 森 マサフミ
筆者プロフィール&コラム概要
日系人市場向け「手づくり納豆」(右)と米系市場向け「MegumiNATTO」(左)

 居酒屋の定番おつまみ「枝豆」は、由緒ある英語辞典に「edamame」として収録され、米国でもすっかり市民権を得ている。大豆を原料にした豆腐も人気だ。背景には日本食ブームや健康志向もあるが、もともとアメリカ人は「豆食い」なのだ。ポークビーンズ、チリビーンズ、ビーンズサラダ、レンズ豆のスープなど・・・アメリカの家庭料理には意外にも豆料理が多い。

 それならば納豆も、米国社会で受け入れられる可能性はある──。そんな、一見無謀にも思えるチャレンジを始めた男がいる。

初の米農務省オーガニック認定

 サンフランシスコから北へ80キロ、カリフォルニア州セバストポールに佐藤南さん(53歳)が経営するジャパン・トラディショナル・フーズ(JTF)がある。2008年11月から、佐藤さんも含めた日本人3人で昔ながらの手作り納豆の製造・販売に取り組んでいる。

 佐藤さんのこだわりは「冷凍しない」ことだ。

 実は米国でも、日系や韓国系のスーパーに行けば、冷凍輸入した日本でもお馴染み納豆パッケージが何種類も並ぶ。自然解凍するだけで手軽に食べられるのだが、やはり一度冷凍したものは風味が落ち、豆のもちもちした食感が失われがちだ。その点、冷凍しないJTF社の納豆には、豆本来の風味や食感が生きている。アメリカ在住の日本人にとっては、まさに待ち焦がれた“新鮮な”納豆なのだ。

 しかし佐藤さんは、たった39万人の在米日系人社会をターゲットにしているわけではない。本当のターゲットは、これまで納豆を食べたこともないアメリカ人だ。日系社会向けの「手つぐり納豆」に加えて、2009年秋に、本格的な米国市場参入を目指した「MegumiNatto」を投入した。

12升の大豆を炊くところから毎日の作業が始まる

 「手づくり納豆」は昔懐かしの藁づとのイラストに、中央部分に日本語のロゴを配しているのに対し、「MegumiNATTO」のパッケージには、あえて日本語ロゴは入れなかった。また、日本風の食べ方だけに固執せずに、自由な発想で新しい食べ方をしてもらうために、あえてタレとカラシは付けていない。そのかわり、マヨネーズやオリーブオイル、ドレッシングなど、味付けに適した食材とおススメのトッピングを一覧にした「簡単レシピカード」を添えた。

 また、初めて納豆を食べる米国人にも受け入れやすいよう、大粒の大豆を使い、あえて浅めの発酵で独特の臭いを抑え、豆本来の風味・旨みを全面に押し出した商品作りをコンセプトとしている。2010年4月には、世界的にも厳しい基準が設定されたUSDA(米農務省)のオーガニック認定も取得、いよいよ、これからが正念場となる。

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愛知県名古屋市生まれ。大阪大学文学部卒業。2002年に渡米し、テレビ取材のリサーチやコーディネートをする一方、「NHKスペシャル」などの番組で映像翻訳を手掛ける。2010年9月に翻訳を担当した「パワー・オブ・フィルム~名画の法則~」(キネマ旬報社)が出版予定。ロサンゼルス在住。


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