米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は先週、同社のパソコン「マック」について、一部の機種を米国で生産するという計画を公表した。
これは米経済誌のブルームバーグ・ビジネスウイークと、米NBCのテレビ番組のインタビューに同氏が応じ、先週6日にそれぞれで掲載、放送されて明らかになった。
中国・富士康と共同で米工場を建設か
それによると、アップルはまず来年、1億ドル以上を米国内で投じる計画を立てている。
同氏は具体的な説明はしていないが、インタビューでは「我々だけでやるのでなく、人々と一緒にやる」と述べていることから、現在アップル製品を受託製造している、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の中国・富士康(フォックスコン)などと共同で米国に工場を建設するのではないかと見られている。
アップルは創業以来長らく米国でパソコンを生産していたが、1990年代半ばから自社工場をEMS(電子製品製造受託サービス)企業に売却し、生産を外部委託するようになった。
その後、委託企業を賃金の安い中国などのアジア企業に移しており、今ではマックをはじめ、アイフォーン(iPhone)やアイパッド(iPad)、アイポッド(iPod)といった同社ハードウエア製品全般を海外で生産している。
しかし、富士康などの中国工場を巡っては、劣悪な労働環境や管理体制が問題視され、人権擁護団体などに非難されている。また米国では高い失業率を背景にオバマ大統領が製造業の国内回帰を重点政策に掲げている。
今回のクックCEOの狙いは、こうした米世論に乗じた巧妙なPR作戦と実利を兼ねたものだと言われている。
アップルにはメリット大、米国には限定的
というのも複数の米メディアの報道によると、アップルが米国内で行うのは製品の組み立て工程のみで、これにかかる費用はパソコンの総生産コストのごく一部にとどまる。
しかも当初生産するのはマックの中でも1機種のみ。同社の収益の大半を占めるアイフォーンやアイパッドは依然として中国で生産するため、米国にもたらされるメリットは多くないと言われている。