米大統領選は11月6日の投開票まで残りわずかとなった。現職バラク・オバマ大統領と共和党ミット・ロムニー候補の支持率は拮抗している。この段階で両陣営はいったい何をするのか。
選挙資金の半分以上が割かれるテレビ広告はこの時期、フロリダ、オハイオ、バージニア州といった激戦州を中心に、1日数億円が使われる。そのうち約8割がネガティブ広告だ。
相手を非難しなければ蹴落とされる
しかも連邦選挙委員会(FEC)は本数も予算も制限しておらず、無制限での広告の打ち合いが見られる。激戦州でテレビ映像を観ていると、朝から夜中まで非難合戦が続く。
ただ相手に非難広告を打たれ、それに対抗して打ち返さないと、その州では確実に支持率が低下する。歴史が示す事実である。
そして選挙対策本部内のハイテク化は20年前とでは比較にならないほど進んでいる。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やデータベースの活用も進化し、多角的に有権者にメッセージが送り届けられている。
けれども21世紀になっても依然として変わらない選挙シーンがある。戸別訪問である。英語ではキャンバシングという。
日本ではテレビによるネガティブ広告も戸別訪問も禁じ手とされているが、米国ではどちらにも制限がかかっていない。
有権者が投票所に出向き、1票を投じるという行動が民主主義の根幹を成す限り、有権者への直接的なアプローチである戸別訪問は意外にも重要視されている。
10月26、27両日、オバマ陣営は支持率で競り合っているバージニア州で大々的なキャンバシングを行った。隣接する首都ワシントンからも応援部隊が駆けつけている。
何十人ものボランティアが2人1組になり、特定地域の民家を一軒一軒訪ねる。時間は1回5時間で、3つの違う時間帯で実施された。