日本は、平成23(2011)年3月11日の東日本大震災の後遺症として、無資源に近い国家の電力エネルギー源確保に関して、核エネルギー発電から撤退し、太陽熱・水力・風力・潮流などの自然エネルギーの徹底開発に移行するかのような方向が不用意に示唆された。
しかし自然エネルギーは、日本の電力需要の1.2%程度の供給能力と量的に限界がある。しかも日本は、現在発電用燃料資源の主力である化石燃料(石油・プロパンガスなど)を、すべて輸入に依存する無資源国家であり、消費できる期間は80年程度であることが示されている。
我が国は、第2次世界大戦敗戦後の経済成長期に、化石燃料が逼迫している無資源国家の電力資源として原子力(核エネルギー)発電が将来にわたって継続的に確保する上で、最良の手段と判断して採用し、事故当時54基の核エネルギー発電装置を稼働させていた。
これは総発電量の約30%に相当する発電量を確保し、さらなる発電量の確保を目指してきていた。
しかし、昨年の東日本大震災における、地震と津波という自然災害に加え、日本政府と東京電力の怠慢が引き起こした「人為災害」によって、福島第一原子力発電所において「3基の発電炉の水素爆発を含む炉の破損」によって放射能漏れ事故を起こし、米国のスリーマイル島原発事故およびロシアのチェルノブイリ原発事故を上回る大きな被害が継続中である。
そのため整備のために発電を中止し、ストレステストを含む点検を終わった大飯発電所の1~2号基をようやく再稼働できたが、他の48基の発電炉の再稼働ができない状況下にある。
しかもこの国家的危機に際して、当時の菅直人総理が国民の信頼を失って退陣する前に、無知な日本人が行う「暴走:スタンピード」と言われる悪弊から発する、「原発ゼロ」発言を行って退陣した。
その結果として、幸か不幸か化石燃料が尽きた段階における日本の核エネルギー発電のあるべき新たな方向が、オボロゲながら見えてきた感がある。
現在、関西電力が点検を終わった原子力発電所の再稼働を模索している。が、不可能であったため今年の夏の所要電力が18%不足した。そのため国を挙げて節電に取り組むという厳しい時期を過ごさざるを得なかった。
福井県民が、原子力発電所の再稼働に合意しない状況にあったことが最大の原因であった。このため平成24(2012)年5月5日までに、日本の54基の全核エネルギー発電所が停止せざるを得ない状況となり、経済に及ぼす影響が極めて大きかったのが実態であった。
日本の核エネルギー科学技術は、「世界各国は、発電のために化石燃料、自然および核エネルギーのベストミックスを追求する上で、日本に学ぶべきだ。原子力でも再生可能エネルギーでも日本の技術は世界最高レベルを誇っている」 と伝えた資料(「原子力とエネルギーの未来」(ニューズ・ウイーク 2011.2.23, p41))がある。
日本がここで核エネルギー発電から退却することは、この世界の見る眼を欺いて3流国家に成り下がる選択をすることとなる実態を警告しておきたい。繰り返して言うが日本は、無資源国家なるがゆえに、この電力不足の危機から脱却するには、核分裂、次いで核融合発電を追求する以外にない情勢の中にある。
その危機的現況から脱却するための最高の選択肢について、本論で概要を示す。