2012年シーズン、日本男子テニス界にとっては飛躍の1年となった。

 ロンドン五輪では1988年以来初めて錦織圭、添田豪、伊藤竜馬の3名が日本代表入りし、錦織圭は5位入賞を果たした。松岡修造氏が引退して以降、昨シーズンまで世界トップ100入りしたのは錦織圭のみであったが、今シーズンに入り添田豪、伊藤竜馬の2人が世界トップ100入りを果たした。

 この2選手は幼少期から国内で育ち、高校総体にも出場していた“国内産”の選手である。

 錦織圭は13歳で渡米してフロリダにあるIMGテニスアカデミーでエリート養成を受けた。海外で英才教育を受けることが世界トップへの唯一の道との考え方が定着しつつあったが、添田豪、伊藤竜馬の躍進により国内産の選手でも世界トップ100入りできることが証明された。今後、国内の高校総体や全日本ジュニアを通過点として世界を目指す若手選手が増えていくことが予想される。

“国内産”の選手が育成された背景

 添田豪は幼少期から神奈川県藤沢市善行にある荏原湘南スポーツセンターを拠点として練習トレーニングを行い、プロ転向後も練習トレーニング拠点としていた。

デビスカップ・ワールドグループプレーオフ、日本対イスラエル。リターンを打つ添田豪(2012年9月16日撮影)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI 〔AFPBB News

 転機は、2008年に「ナショナルテニスセンター(NTC)」(東京都北区)が設立されたことにある。室内テニスコートの他にもあらゆる施設(トレーニング、リハビリ、情報戦略、栄養指導など)が整備されており、テニスに集中できる環境が整備された。

 また、常にNTCにおけるコーチ、トレーナーと練習トレーニングができるようになった。遠征先にもコーチやトレーナーを帯同して質の高い練習やトレーニングが可能となり、“移動型ナショナルトレーニングセンター”が実現した。

 さらにはJOC(日本オリンピック委員会)の助成制度活用によって、重点強化選手に金銭的なサポートがなされるようになった。2008年からは添田豪、2009年からは伊藤竜馬が重点強化選手に選出された。