おれは、昔から三度のメシより車が大好きで、何台も乗り継いできた。

 「この車、欲しいな」って思ったら、いつも衝動買い。車ってのは女と同じで相性ってのがある。ドライバーとの呼吸っていうのかな。身体の一部のような感覚で操れるから車ってのは面白い。

 この感覚っていうのは、非常に大事なんだ。例えばBMWは、エンジンフィールと操縦性を重視するというコンセプトでFRにこだわり続けるし、フィーリングのいい自動車を操縦していると、街の風景まで変わってくるようで不思議だ。

 おれの場合、自動車を買っても、乗ってみて相性が合わなければすぐに売ることにしている。贅沢だと思われるかもしれないが、クルマは乗ってみなければ感覚を確かめられないし、仕事一筋に生きてきたおれも、あと数年で80歳。そう長くはないかもしれないから、好きなことを我慢して思い残すことだけはしたくないんだよ。

ハイブリッドカーのアドバンテージはいつまで続く?

 エンジンとモーターを融合させたハイブリッドカーっていうのは、高い技術がないと製造できない複雑なシステムの自動車だ。

 状況に応じて、単独、あるいは複数の動力源でクルマを走らせるという技術を実用化しているのは、日本ではトヨタ自動車とホンダだけ。ハイブリッド技術で先行したトヨタやホンダに対し、日産自動車や三菱自動車は電気自動車の量産で対抗しようとしている。

 なんせ、このハイブリッド技術の開発費用は数千億円単位らしい。独自で巨額な開発費を出せないメーカーは、ハイブリッド技術を持つメーカーと提携するなどしているが、現時点でこの技術は日本の独擅場と言っていい。

 とはいっても、日本の自動車産業もうかうかしていられない状況にある。なぜなら、これからの自動車産業は確実に激動の時代を迎えることになるんだから。それもすぐにね。

 すでに中国では3年前から、原付バイクやスクーターは電動が主流になっている。中国の隣、ベトナムで大人気のホンダのカブは、中国では「時代遅れの産物」といった感じで、ほとんど走っていないんだな。

 それなのに、中国でこれほど電動スクーターが普及していることは、日本では、ほとんど報じられていない。この電動スクーターは1回の充電で40キロメートルは走るから、中国の技術は侮れないよ。

 こうなってくると、新しい技術の開発に挑戦しないこと自体がリスクなんだな。何もしなければ、すぐに業績に跳ね返ってくるからね。