政治学者、姜尚中氏による90万部を突破した大ベストセラー『悩む力』。現代人の悩みの本質を、100年前に同じ悩みに直面した夏目漱石とマックス・ウェーバーを通して分析し、いかに悩みを乗り越えるかを提唱した本である。

 その続編『続・悩む力』が発売された。前著『悩む力』との決定的な違いは、本書が東日本大震災後に書かれたという点にある。

 姜氏は、日本人がおぼろげと抱いていた経済や社会に対する不安が、震災によってさらに深刻なものになったという。八方ふさがりの状況をどうすれば打破できるのか。姜氏は、今までの「幸福論」を根底から見直し、覆すことが、不安に打ち勝つ第一歩になると説く。

変わらなければ日本はますます深刻な状況に

──東日本大震災は私たちの生き方にどのような影響を与えたのでしょうか。

姜尚中氏(以下、敬称略) 震災後になぜ日本中で「絆」という言葉が噴き出したのか。それは震災以前から日本の社会に、個人ではもう担い切れないような不安感が蔓延していたからだと思います。

続・悩む力』(姜尚中著、集英社、777円、税込)

 日本はこのまま確実に萎えていくんじゃないかと誰もが疑わずにいるような状況でした。震災によって、その不安がはっきりと可視化されたのです。

 けれどもあれから1年以上経って、震災のことを遠い世界の出来事と捉える人たちも出てきている。変わろうにも方向が見えないから、差し当たって静観するような状況になっています。

 でもここで変わらないと、日本はさらに困難な状況に陥るでしょう。私たちは次の時代に向けての決定的な分かれ道に直面しているんです。この本ではそれをみなさんに知らせたかった。

──どうすれば「変わる」ことができるのでしょうか。

 今までの日本人には、お互いにシェアし合う「幸福論」や「幸福の方程式」というものがありました。そこから外れていると幸福にはなり得なかった。

 でも、本当にそうなんだろうかと疑うべき時に来ています。今までの幸せの図式を、根本的にふるいにかけてみる必要があるということです。