中国大使館1等書記官の「スパイ疑惑」が報道をにぎわした。尖閣諸島をめぐる一連の摩擦、中国海軍艦艇による南西太平洋域での活発な行動など、日中関係は報道を俯瞰している限りではどうもキナ臭さを増している。

 今年は日中国交回復40周年にあたるが、10年前に30周年を迎えた時のような慶賀ムードが全く感じられない。両国ともに、公式筋では祝う気など全くなさそうな雰囲気である。

日中互いに「やっかいな隣人」

 中国を指す最近の言葉に「やっかいな隣人」というものがある。言い得て妙だと思う。いわゆる一般的な付き合いでは、「イヤな奴」は敬遠して付き合わなければ済む。しかし、隣人となると、最低限の付き合いは避けられない。なかなか引っ越してもらうわけにもいかないので、そりの合わない隣人というのは、やっかいな存在なのだ。

 しかも中国を考える場合、日本にとってもどかしいのは、日本経済にとって重要かつ欠かせない商品と投資の市場が中国に形成されていることである。

 いろいろなリスクがある中で、よくぞこれだけと思うくらい日中の経済関係は深化し、貿易取引額も増大してきた(日本の対外貿易額の2割は中国一国との取引による。すでに対米貿易額を大きく超えている)。これは、日本の経済界、特に中小企業を含む個々の企業の努力によるところが大であり、もっと評価されてしかるべきであろう。

 胡錦濤主席がここ数年、「日本との戦略的利益の共有、拡大」と言っていることのベースとなるのが、この事実である。

 一方で中国では、日中関係を指して「政冷経熱」(政治関係は冷え込み、経済関係は熱く発展)と言われている。これは行間を読む限りにおいて、中国にとっても日本が「やっかいな隣人」であることを窺わせるものだ。

 イヤな面もあって腹の立つことも多いのだが、それだけで断ち切ることのできない関係──そこに日中お互いの「やっかいな隣人」関係の本質がある。