昨日に引き続き、エコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ 2012―アジア・グローバル金融の現状と未来」のリポートをお送りする。
第2回の今日は、『欧米、アジア、グローバル? 金融規制と中央銀行のあるべき姿』と題されたセッション。
パネリストは、バンク・オブ・NYメロン アジアパシフィックCEOのアラン・ハーデン氏、フィナンシャル・タイムズ 国際金融主席特派員ヘニー・センダー氏、IMF(国際通貨基金)ヨーロッパ部門アシスタント・ディレクターのスビル・ラル氏、慶應義塾大学経済学部教授、金融庁金融研究研修センター長の吉野直行氏の4名。
世界的にルールベースの金融規制が増えていく見通し
ハーデン 金融規制に関して、これまで大きく2つの流れがありました。私の見方で言うと、1つは距離を置いた規制、そしてもう1つはリレーションをベースにした規制です。
いままでの多くの規制は、相当距離を置いた規制になっていました。アジアの銀行についてもそう言えると思います。アングロサクソン・システムとよく言われますが、英国と米国に特徴的なものです。
しかし、米国の金融危機によって状況が変わってきています。まだ最終的に落ち着いているわけではありませんので、2つのうちのどちらに流れが向かうのかは見えていません。各地域においてもまだ最終的な結論は出ていない状況です。
そういう中で、アジアにおいて金融規制はどんどん増えてきています。それがプリンシプルベースの規制になるか、ルールベースの規制になるかが大きな課題になってくると思います。
アジアといってもさまざまな国があります。ヨーロッパにもさまざまな国があり、例えば南欧と西欧は大きく違うわけです。しかし、ボルカー・ルールやドッド・フランク法などを考えると、ルールベースの規制が増えるであろう、各国の規制当局がルールベースのような規制を展開していくのではないかと思います。
ラル 私は、グローバル化というのは基本的によいことだと考えています。それによって貧困が減りました。これは歴史的に見ても確かです。ですから、アジアにおいてもグローバル化が進むことは、多くの人にとってよいことです。
そして金融のグローバル化も、貿易のグローバル化と同じものだと思ってるので、とてもよいことだと考えています。つまり、金融においても時計の針を逆に戻そうというような動きはよくない、金融規制もグローバル化から離れるような動きになるのはよくないと思います。
国境を越えた規制の標準化は必要だと思いますが、誰がそれを決めるのかがとても重要なことです。その国の経済の中にいる人たちが金融システム、金融規制を変えたいという気持ちにならなければいけません。
例えば、農業国から次第に工業国になるなど市場が発展することによって、それに適した新しい金融規制、またはグローバル化した金融規制の枠組みに入りたいという気持ちが出てくるべきだと思います。つまり金融規制というのは、経済の進化の度合いによるべきものだと考えます。
ただ、問題が出てくる時は、金融危機が起こるということです。本来ならば経済の進化に合わせて金融規制を一緒に進化させなければいけないわけですが、それが手遅れになった時に金融危機が起こるかもしれない。