やみくもな「ベクレル規制」が水産業を滅ぼす

石巻で勃発したマダラ騒動

2012.05.21(Mon) 高成田 享
筆者プロフィール&コラム概要

 漁業者への影響も深刻だが、石巻だけでもマダラを扱う加工業者は24社もあり、この規制が長期化すれば水産加工業への打撃も広がり、この24社が雇用する400人の従業員の生活も脅かされる、と関係者は嘆く。

 石巻の水産関係者の必死の陳情に対して、国側は県からの要請があれば、解除もありうるとの見解を示したという。このため、水産関係者は県からの解除要請を早期に出すよう、県に働きかけているという。

 もともと生産者側は、500ベクレルの暫定基準を100ベクレルに強化した基準が設けられたことに不満を持っていた。そのうえ、漁業の実際、水産加工の実態も無視して、生産制限や出荷制限をかけられたことで、いらだちも倍加したようだ。

規制強化の仕組みも含めた規制システムを

 国からすれば、1匹でも基準値を超える産物が消費地に出回るようなことになれば、国としての責任を追及されるという恐れがあるのだろう。しかし、産地からすれば、広範囲に規制をかけられてしまえば、産地の産業は滅びるという不安がある。

 きめ細かい検査態勢のもとで、これまでの検査実績や産地の実情に合わせた規制をかける。それでも、規制を超えるものが出てくるのなら、さらに規制の範囲を広げるなりの規制を強化する。規制強化の仕組みも含めた規制システムができていれば、消費者が規制を超える産物が出回ったことでパニックに陥ることはないだろう。

 消費者が恐れているのは、たまたま食べた産物が基準値を超えていることではなく、そういう産物を恒常的に食べるかもしれない仕組みになっていることだ。

 放射性物質に汚染された日本列島に住む私たちが、ゼロベクレルのもの以外は絶対に口にしないということは不可能だ。規制を甘くするのではなく、より厳しい監視体制で、そういうものが出回らない仕組みを整えることが大事だろう。

 今回のマダラ騒動は、消費者と生産者がどちらも納得できる対策を取る必要性を示している。

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1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。71年に朝日新聞社に入社。山形・静岡支局員、東京経済部員、アメリカ総局員(ワシントン)、経済部次長、アメリカ総局長(ワシントン)、論説委員などを歴任。96年から97年にかけてテレビ朝日「ニュースステーション」キャスターを務める。定年後にシニア記者として2008年1月より2011年2月まで石巻支局長。2011年4月より仙台大学教授。仙台白百合女子大学非常勤講師、前橋国際大学客員教授。農林水産省太平洋広域漁業調整委員会委員。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著)、『アメリカの風』、『アメリカ解体全書』(共著)、『榎本武揚』(共編著)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記』『話のさかな・コラムで読む三陸さかな歳時記』(共編著)などがある。


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