韓国の金融委員会は2012年5月6日、経営内容が悪化していた4つの貯蓄銀行を営業停止処分としたと発表した。韓国政府は昨年にも16の貯蓄銀行を営業停止にしており、2年間で20行が営業停止となった。
今回営業停止となった未来貯蓄銀行の会長は、30年前に偽ソウル大生事件を引き起こした張本人。今回は、営業停止処分の直前に中国に密航しようとして漁船に乗り込んだところを海洋警察に現行犯逮捕された。韓国では、「どうしてこんな人物まで会長になっているのか」との驚きの声が上がっている。
営業処分の直前に漁船で密航を試みた会長の正体
まるで映画かテレビドラマのシーンのような捕り物だった。
5月3日午後8時半ころ。ソウル南西部に位置する京畿道の小さな港に黒塗りの乗用車2台が到着し、5人の男たちが降りてきた。このあたりは漁港でたまに夜釣り客も訪れるが5人は旅行かばんなどを持っていて、到底「釣り」とは無縁な格好だ。
待っていた漁船に乗り込むと同時に、付近に隠れていた10人ほどの海洋警察官が漁船に走りこみ、一行を「密航」の現行犯で逮捕した。
取り調べた海洋警察は、一行のリーダーが未来貯蓄銀行のオーナー会長である金チャンギョン氏であることが分かると仰天した。
会長は軽装だったが、旅行かばんの中には1200万ウォン(1円=14ウォン)の現金があった。
金会長は、未来貯蓄銀行に対する営業停止処分が不可避と見て、かねて準備していた密航ルートを使って中国に逃亡しようとした。韓国メディアによれば、金会長の運転手がこれを密告して、海洋警察が張り込んでいたという。
銀行の会長が密航するというのも前代未聞だが、運転手に密告され逮捕されるというのも何ともお粗末な話だ。
逮捕の3日後、金融委員会は未来貯蓄銀行など4つの貯蓄銀行を営業停止処分とした。未来貯蓄銀行の場合、粉飾決算を重ね、「5.67%」と発表していたBIS基準に基づく自己資本比率が実際はマイナス16.2%であることが明らかになった。