我が国は、国連を中心とした国際社会が行っている平和と安定を求める努力に対し、日本の国際的地位と責任に相応しい協力を行うため、物心両面の協力を行ってきた。

 1992(平成4)年6月、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(以下PKO協力法)を制定し、同年のカンボジア暫定機構(UNTAC)への陸上自衛隊の派遣を皮切りに、モザンビーク、ルワンダ等々12件のPKO派遣、5件の「人道的な国際救援活動への協力」及び8件の「国際的な選挙監視活動への協力」を行ってきた。

 また国際緊急援助隊法(JDR法)に基づき、被災国や国際機関の要請に基づき国際緊急援助活動を行ってきた。更には、イラク特措法やテロ特措法、新テロ特措法に基づく人道復興支援等の活動をも行ってきた。

 また、ソマリア沖やアデン湾での海賊行為から付近を航行する船舶を護衛する為に、当初は海上警備行動により、海賊対処法が成立後はそれに基づき水上部隊及び航空部隊が派遣されている。

 経済的な面における国際平和等協力においては、その主体である政府開発援助(ODA)等による協力を行っており、民間のレベルにおいても、NGO等が様々な形での国際平和協力を行っている。

自衛隊員のPKOワッペン

 1992年のPKO協力法から20年、日本らしいきめ細かな活動と他国から称賛されるプロフェッショナリズムを発揮してきた。日本の国際協力の諸活動もそれなりの経験と実績を積み、見直すべき事項も多々あるものと考えられる。

 特に国連平和維持活動については、検討改善すべき点が多いと思われ、最近報じられた(平成24年4月25日)ところによると、PKO協力法の改正が俎上に上っている。

 本稿は、現状や過去の経緯を踏まえ、あるべき国際平和協力活動について論考しようというものである。

1.多機能型PKOへの対応

(1)伝統的PKOから多機能型(複合型)PKOへ

 冷戦下におけるPKOにあっては、紛争当事者間の停戦合意を前提として、平和維持部隊や軍事監視員による停戦監視、兵力引き離し等を行って敵対行為の再発を防止することが目的であった。

 しかしながら、冷戦構造が崩壊すると、国際平和と安全の維持に関する国連の役割に対する加盟国からの期待が高まってきた。また、紛争の態様も国家間の紛争から、一国内における紛争へと変容した。

 これに伴い、PKOの任務も多様化し、伝統的なPKOの任務に加え、選挙監視、文民警察、人権擁護、難民帰還支援、行政事務、復興開発等の分野における活動が任務に付加されるようになった。

 詳細は割愛するが、この変遷は、ガリ事務総長の「平和への課題」(1992年)と「同追補」(1995年)、更には2000年「ブラヒミ報告」に明らかである。