「普天間基地」移設問題の議論が沸騰している。

徳之島に首相が協力要請、3町長は断固拒否 普天間問題

徳之島の3町長と会談した鳩山由紀夫首相だが、移設拒否されただけに終わった〔AFPBB News

 しかし、沖縄に駐留している米海兵隊が8000人削減され4800人になることが示す意味、すなわち米国の軍事戦略の中でどのような変化が起きて、新たな戦略の中で沖縄駐留の海兵隊はどのような役割を担うことになったのかについては、誰も疑問に思わず、あるいは全く知らず、またマスコミも全く報道しない。

 こうした本質的な問題を看過して、また、日米安全保障条約の第6条に言う施設・区域の提供が米国の我が国防衛への参画の条件であることも看過して、「米軍は国外か、少なくとも県外へ」とか、「徳之島に訓練の一部を移転で」といったスローガンが飛び交う。

 さらには、「5月末までに決着しなければ鳩山首相はどのような責任を取るべきなのか」といったことにのみ焦点が当てられ、問題の本質が見失われたまま議論が横行している。本質を見失い、瑣事末梢にとらわれ大局を看過する、日本人の悪い性癖である。

ラムズフェルドの「10-30-30戦略」

「グアンタナモなどの虐待はラムズフェルド氏らに責任」、米上院報告書

ドナルド・ラムズフェルド元国防長官〔AFPBB News

 「普天間基地」移設問題は、実は、米ジョージ・W・ブッシュ大統領時代のドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)が示した「10-30-30戦略」に大きく関わっている。

 米国は軍事分野における変容(トランスフォーメーション)の結果、海外に駐留する陸軍および海兵隊の師団が軽量化されることにより、純作戦面からすれば、前方駐留(Forward Presence)という形式でなくとも、緊急時に前方展開(Forward Deployment)することで各種紛争等に迅速に対応できる時代となった。

 これは、米空軍が実施する衛星誘導爆弾による精密爆撃が有効となったため、陸軍の砲兵の役割を空軍が実施するところとなり、陸軍はカノン砲や榴弾砲といった重火器装備の帯同を局限することができ、重戦車の随伴も局限可能となったためである。

 軽量な部隊規模で作戦を遂行することが可能となったことによって、師団の軽量化が進んだことに加え、師団編制から旅団編制へのコンパクト化も進行した。また、重火器等が邪魔していた迅速・至短時の機動展開が可能となり、その結果、あらかじめ前方への展開を必要としない時代が到来したからである。