ワインを象徴するものの代表格と言えばコルク栓です。飲食店の入口にコルク栓が並べられているのを見たら、たいていの人はワインを出す店と連想するのではないでしょうか。

 ローマ時代にヨーロッパへ一斉に広まったワインですが、現在のガラス製の「瓶」の形状で流通するようになったのは、実は最近のことです。長い間、ワインは陶器製の「甕(かめ)」で保管されていたのです。

 密閉性の低い甕で保管されたワインは酸化が早いので、ワインを寝かすという発想は生まれませんでした。そんなワイン文化を決定的に変えたのが、コルク栓の発明です。正確にはガラス瓶とコルク栓、両方の発明があってこそ、現在のワインのスタイルが確立されました。

ポルトガルのコルク原材(Wikipediaより)

 現在、コルク栓の52%はポルトガルで生産されています。次いで、同じく地中海西側のスペイン、北アフリカ諸国、イタリア、フランスが続きます。これは原料のコルク樫の森林が220万ヘクタールも地中海西側に生育するためです。

 特にポルトガルは世界のコルク樫の3分の1を生産しています。日本で利用されているコルクの3分の2はポルトガル製です(ポルトガルコルク工業会より)。

 コルクをワインの栓として初めて利用したのもイベリア半島の人たちでした。イベリア半島の巡礼者たちが水筒の栓としてコルク材を利用していたのを見て、かのドン・ペリニョンはシャンパンの栓としてコルクを採用しました。

 追って産業革命が起こると、ワインを生産できないワイン消費大国のオランダやイギリスが運搬に便利な瓶を開発し、コルク栓も併せて一気に普及したのです。

ワインの普及を後押ししたスクリューキャップ

 ワインと切り離すことができないコルクですが、1つだけ問題があります。それは、ブショネと呼ばれるカビ臭が稀にワインに付着する現象が起きてしまうことです。

 その確率は3~5%と言う専門家もいます。さすがに「20本に1本」は言い過ぎですが、ワイン生産者にとっては丹精を込めて作ったワインを台無しにしてしまうため、大きな問題となっています。

 中にはワイン生産者がコルク業者に損害賠償を求めるケースもあります。ワイン樽や保管状況によっては、ワイン生産者側に過失がある場合もあり、毎回争点となります。

 ブショネの主な原因は、樹皮を殺菌する際に利用する塩素の残り香と言われています。現在は酵素で殺菌することで、ブショネの発生を大幅に減らすことができています。