MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 内外に大きな反響をよび、厚生省(当時)の一連の医薬品行政改革にもつながった「薬価の国際比較調査(1994年、1995年)」(大阪府保険医協会実施)から16年。

 全国保険医団体連合会(保団連)は、(1)日本の薬価水準(2)製薬企業の収益性・財務の実態―について、精細な調査を行い、「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案」を発表した(2011年12月22日)。調査結果をもとに、医療費の供給側要因、とりわけ高騰する薬剤費の分析を踏まえ、医療保険財源のあり方について提言する。 

●わが国では、患者負担増など需要要因にもとづく露骨な医療費抑制政策がとられた結果、「病人になれない患者」が増えている。一方、継続的な薬価引下げをしてきたにも関わらず、薬剤費は高騰し約10兆円にも達している。

●日本でよく使われている薬剤77品目の相対薬価(倍率)は、英国、フランスと比較して約2倍、ドイツと比較して約1.3倍であり、市場規模の大きい薬剤ほど2.2~2.3倍と高く、依然として日本の薬価水準が国際的に高いことが判明した。

●医薬品製造業の過去10年間の売上高営業利益率は、多額の研究開発費、販売管理費等を控除してもなお、全製造業平均の3倍近い異例の高水準を安定して記録している。高収益構造を反映して財務上は異常なまでの内部留保も存在する。同じ医療保険財源に依拠しながら、医薬品業だけが高収益を享受している実態は決して看過できない。

●保団連は日本の医療費を対GDPで11%までOECD平均並みに引き上げることを提起している。こうした医療費の総枠拡大と同時に、医療費配分の最大の矛盾、高すぎる医薬品や医療機器の価格をせめて欧米並みに是正すべきだ。とりわけ薬価そのものの決定メカニズムについて、抜本的改善を図るべきだ。

●例えば「後発品のない先発薬」の薬価を一律2割カットしただけでも、約1兆円を捻出することが可能。