ヨーロッパはサーカスの本場。この地で生まれたサーカスは、いまも多くの人々に愛されている。

 スイスでは、3月後半にサーカスの幕が開く。冬季の休憩を終えたサーカス団が、新演目の全国ツアーを始めるのだ。「今年も待っていた!」というファンは津々浦々にいる。 (文中敬称略)

サーカスは見るだけでなく"演じるもの"

ヨーロッパはサーカスの本場。スイスではクニー家が率いるKnieサーカスは絶大な人気を誇る(筆者撮影)

 日本の人たちに比べ、サーカスはヨーロッパの人たちにとっては身近な存在。見て楽しむだけではなく、実際に演じて楽しむという選択肢があり、ここスイスにはサーカスを教える教室・学校が各地にある。

 驚いたことに、特別プロジェクトと称して全校生徒でのサーカス公演に取り組む小学校まである。

 サーカス学校が援助して子どもたちは何らかの芸を練習し、校庭に張った大きなテントで地域の人たちに披露するのだ。チケット売り、舞台設定や音楽、手作りのプログラムやおやつの販売といった裏方も子どもたちや先生たちの仕事だ。

 サーカスの根付き方が日本とはいかに違うか、サーカスの社会的地位がいかに高いかを実感させられる。

 読者も知っての通り、サーカスと一口にいっても曲芸は空中芸、複数のボールや箱をキャッチするジャグリング、動物芸、間を取るピエロなど実に幅広い。体を通常では考えられないほど自由自在に曲げる芸「コントーション」も、その1つだ。

 2年前にスイスにやって来た日本人パフォーマーのディオ・コバヤシ(Dio Kobayashi、39歳)は、このコントーションをチューリヒから1時間離れた都市バーゼルで教えている。

スイスではサーカスは子どものお稽古の1つ。サーカス学校の公演の模様 (写真提供: Jugend Circus Basilisk)

 「バレエやアイススケートの盛んなスイスでは、サーカスを目的としていなくても、柔軟な身体を幼いうちから身につけさせたいと、3歳前から親に連れられてやって来る。

 早期に学ぶ利点は、幼い時の方が柔軟な身体を得やすいこと、発育に合わせた健康的な身体をつくれること。いまの日本の子どもたちに欠けていると言われる達成感を養うこともできる」