中国住宅都市農村建設部はこのほど、2012年6月までに全国主要40都市で、個人の住宅保有情報システムを統一化するとの方針を明らかにしました。

 同40都市の不動産販売量、購入資金の流れ、未入居率などの情報を明確化することで、不動産市場の過熱を抑えるとともに、健全な不動産市場を目指そうというものです。

中国政府は不動産市場の過熱を抑え、健全な不動産市場を目指そうとしているが・・・(画像は本文とは関係ありません)

 北京や上海などの大都市では、市場の成熟化に伴って、不動産取引の透明性が高まってきていますが、それ以外の都市では依然不透明な取引や資金の流れが問題視されており、政府もこうした問題を懸念しています。

 私も不動産調査で外地の販売センターをよく視察しますが、詐欺まがいの行為を行っているデベロッパーや違法な購入を勧めてくる販売員などを、各地でよく見かけます。

 政府もこうした違法行為の取り締まりの強化を図っていますが、中には現地政府とグルになって違法行為を行っているデベロッパーもあり、取り締まりがなかなか進んでいないのが現状です。

減税のために販売面積を偽装するデベロッパー

 中国北部にある住宅プロジェクトを視察した際、あるローカルデベロッパーが減税のために登記簿上の住宅面積を偽装して販売し、大きな利益を得ているというケースがありました。

 例えば、100平方メートルある間取りの物件を、30平方メートルとして販売し、企業所得税を抑えるといった手法です。デベロッパーの所得税は、販売面積が大きいほど税金も上がるため、契約面積を低く抑えることで、大幅なコスト削減ができるというわけです。

 一方で、購入者に対しては販売価格を低く設定することで、周辺の物件よりも割安に取得できると強調します。事実、取得総額は周辺の住宅に比べ割安なため、予算の少ない若い世帯などに人気があるようです。

 しかし、ここで注意しなければならないのは、産権証(登記簿)に記載される部屋の間取りは、契約通り30平方メートルと登録されることです。すなわち、将来もしこの家を売却する場合は、販売価格が産権証に基づいた面積により決定される可能性が高く、評価額は大幅に減少することになります。

 また、土地の所有権が認められていない中国では、国からいつ何時立ち退きを要求されるか分かりません。もし立ち退きの通達があった場合、立ち退き後の住宅は産権証に基づいて振り分けられることになり、与えられる住宅の面積は大幅に減少する可能性もあります。