昨年末、米ニューヨーク州にある電力会社が破綻した。福島の原発事故による東京電力の経営危機とは関係がない。

仏アレバ、今年の赤字最大で1600億円に

フランスの原子力大手アレバ社は2011年の営業損失が約1600億円に上る見通しと発表した 〔AFPBB News

 日本ではほとんど話題になっていないが、AESイースタン・エナジー社という企業の連邦破産法第11章の申請は、電力会社でも破綻することを如実に示している。

 同社は総合エネルギー企業AES社の子会社で、AESは27カ国に発電所を持つ大企業である。

 だが天然ガスの価格低下による電力料金の下落、同時に環境汚染対策に予想以上の経費がかさんで破綻。計1000メガワットの発電能力のある2工場は売りに出されている。

エンロン問題を機に日本の自由化論議が消滅

 米国ではこれまでもエネルギー関連企業が倒産したことはあった。覚えておられる読者も多いだろうが、2000年に始まったカリフォルニア州の電力危機で2001年2月、パシフィックガス&エレクトリック社という企業が倒産している。

 同年12月にはテキサス州で、総合エネルギー企業エンロンも破綻する。同社の破綻は不正経理と不正取引が主因なので、電力事業の構造上の問題ではなかったが、エネルギー業界に大きな傷跡を残した。

 パシフィックガス&エレクトリックの破綻は、米国が発送電を分離して自由化に突き進んだ矢先のことだった。電力不足に陥る地域が出て、停電が頻発した。

 ライフラインの事業者は、基本的に想定外の事態をも回避する能力が要求される。いまだに停電が日常的に起きている国もあるが、先進国での停電は問題視される。

 同じ時期、日本も自由化に向かう議論が活発化していたが、米国のこの失敗を見て発送電分離は実現しなかった。

 しかし原発事故後、日本の発送電分離の動きが慌ただしい。朝日新聞の1月29日(日)1面には「電力会社 私が選ぶ」というタイトルが踊っている。