普天間問題の迷走ぶりには日本中がため息をついている。麻生太郎前首相の失言・無責任発言に対する国民のウンザリ気分は、民主党政権誕生の原動力の1つになったが、鳩山由紀夫首相の無責任ぶりはそれ以上かもしれない。
民主党政権の発言の軽さは、首相に限ったことではない。「政治主導」をかさにきて、思いつきにしか見えない政治家の発言や方針で議論が錯綜することもしばしば。民主党政権の救いようのない軽さを検証する。(敬称略)
出先機関改革で枝野行政相、原口総務相がちぐはぐ発言
民主党は2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で、厚生労働省の都道府県労働局、国土交通省の地方整備局といった国の出先機関を原則廃止する方針を掲げた。自治体と業務が重複している上、住民や地方議会のチェックも不十分になるため、以前から「出先機関は地方分権に反する」として批判されていた。
この問題では、自民党政権も見直し論議を進めていた。政府の地方分権改革推進委員会は2008年12月までの2度に渡る勧告で、出先機関の統廃合を提言。同時に、労働局のハローワーク(職業紹介業務)、地方整備局の河川管理といった事務の自治体移譲を通じて、出先の人員3万5000人を削減するよう要請した。
民主党は衆院選勝利で政権の座に就くと、早々に分権委の検討作業にストップを掛け、それに代わる組織として11月に「地域主権戦略会議」を発足させた。勿論、政権が交代した以上、前政権時代の「古い皮袋」に固執する必要はない。問題はその後のプロセスだ。
「国民の期待は分権委の数字がスタートライン」──。行政刷新担当相の枝野幸男は就任直後の2010年2月14日、3万5000人以上の削減を目指す考えを示した。総務相の原口一博も「これまで以上にタッグを組んで変革を進める」と呼応し、並々ならぬ意欲を見せた。
ところがである。原口は2月25日の衆院予算委員会で「ハローワークまで地方に移管するのは少しやり過ぎと思う」と答弁し、あっさり、枝野が架けたハシゴを外してしまう。
ハローワークの地方移管については、労働紹介における国の責任を求めているILO(国際労働機関)条約との整合性が常に問われている。そもそも、身分を保証された公務員の解雇は法律を改正しないと無理だ。出先機関の職員を地方に移管する際にも、前提条件として地方側は国からの財源移譲を求めているが、国の財政事情が厳しい中で容易ではない。現実路線で考えれば、原口が「少しやり過ぎ」と言いたくなる気持ちはよく分かる。
しかし、枝野が「スタートライン」とした3万5000人の削減の中には、ハローワーク職員1万1000人の地方移管も含まれている。これを取り消しにして、いったい、どうやって「スタートライン」に就くつもりなのか。
河川管理も、地方への権限移譲はそう単純ではない。例えば、「首都圏の水がめ」である利根川水系は群馬、長野、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京の1都6県を流域とする。財政事情や他の公共工事との兼ね合いなど、流域各都県の事情はそれぞれに異なる。ゆえに、事業の優先順位や費用割合などを巡って、流域団体の思惑が錯綜することは確実。地方分権で各自治体の判断に任せていては却って混乱を招きかねない問題だ。