子どもたちも思い切り絵が描ける。アイデアペイントは家庭でも学校でも大活躍だ(写真は全て、アイデアペイントが提供)

 壁に塗るだけで、どこでもホワイトボードに変えてしまう魔法のようなペンキが今、アメリカで注目を集めている。壁だけでなく、ドア、柱、冷蔵庫、机、ベッドなど自由な発想でどこにでも応用できる。市販ホワイトボード用ペンで書け、消すのも乾いた布か通常の白板消しが使えるため便利だ。

 オフィスや商店はもちろん、小さい子どものいる家庭なら子ども部屋の壁を大きなキャンバスにして未来のアーティストの才能を開花させてもいい。すでに欧州やインドやオーストラリアでも利用されている。(文中敬称略)

 この特殊ペンキを開発したのは、マサチューセッツ州ケンブリッジのアイデアペイント。商品名も同じくアイデアペイントだ。

 使い方は普通のペンキと同様、凹凸のない面に塗るだけ。2度塗りは不要。下塗り用のビニルアクリルプライマーを使えば一段とキレイな仕上がりになる。あとは、完全に乾くまで7日間じっと待てば、ホワイトボードの出来上がり。

学生寮で大学生3人のアイデア

ディスカッションしながら、複数人数で書き込めるのも便利

 アイデアペイントを生み出したのは、ジョン・ゴーシャ(26歳)、ジェフ・アヴァロン(26歳)、モーゲン・ニューマン(25歳)の若き3人。起業家教育に特化した私立バブソン大学の卒業生だ。

 アイデアを思いついたのは、大学に入学して間もない頃だった。3人は学生寮で、ほかのクラスメートたちとビジネスのアイデアについて自由に発想を出し合っていた。壁に紙を貼って、提案や意見をどんどん書き込み、紙がいっぱいになると、もう1枚新しい紙を追加する。しかし、とうとう壁に紙が貼り切れなくなった。そのとき、ゴーシャが「壁に直に書いて、消せれば便利なのに・・・」と思ったのだ。

 早速、ゴーシャは大学の実験室で試作品を作り始めた。その後、2つの研究所がまだ粗削りの段階の試作品を改良する実験を請け負ってくれた。両研究所とも複雑な技術を克服できなかったが、諦めずに別の研究所に依頼。3度目の正直でようやくアイデアペイントが完成した。

 卒業後、2008年6月にゴーシャが設立者となり、アヴァロンとニューマンが共同設立者となって3人で正式に起業した。その年の北米最大規模のインテリア・デザイン見本市のネオコン世界貿易フェアー2008でアイデアペイントをお披露目。出展商品を対象に実施されたコンテストでは、革新部門と壁部門でベスト・オブ・ネオコンをダブル受賞し、華やかなデビューを飾った。