この中には、もちろん値段の安い製品群も含まれているが、「高価格の大画面製品でも、韓国メーカーが日本メーカーを上回っている」(国内系証券会社のアナリスト)という。
日本のトップメーカーが韓国製品のマネを始めた
こうした現状について、「韓国メーカーの実績は、ウォン安という追い風によって嵩(かさ)上げされたもの」(証券会社のディーラー)と見ることもできる。また、「韓国メーカーは中国市場の急成長を日本企業よりも一歩先にとらえただけ。サムスンは無理としても、LGからのシェア奪還は可能」(別のディーラー)と見る向きもある。
だが、その見方は楽観的すぎるようだ。
過日、日本のある有力部品メーカーのトップと会う機会があった。内外の大手電機メーカーと長年の取引実績があり、各社の注文に応じて精緻なオーダー部品を作る優良企業だ。
ちょうど本稿の準備を進めていた筆者は、件の薄型テレビのシェアについて訊ねた。当初、筆者は先のディーラーのような考えを抱いていたのだが、期待を込めた思いは即座に打ち砕かれた。
このトップはこう言い放ったのだ。「ここ1年程度の間に、X社が韓国製部品を徹底的に調べ上げ、ウチに注文を出してくるようになった」。X社とは誰もが知る日本のトップメーカーの1つである。
技術革新のテンポが速い薄型テレビだけに、ライバル社の隅々まで調べるのは企業の開発姿勢としては当然だろう。が、このトップによれば、「従来、X社はオリジナルの設計にこだわり、他社の真似をすることがほとんどなかった。それなのに、最近はなりふり構わずという印象を受ける」と言うのだ。
そのトップは、そう語りながら表情を著しく曇らせた。記者上がりの経験で言えば、トップの言葉にウソはないと見る。こうした生産現場の動向が先の調査結果に如実に表れた、と指摘したら言い過ぎだろうか。