ユーロ圏16カ国首脳は3月25日、ギリシャに対する金融支援策の枠組みで、ようやく合意に達した。ギリシャが資金調達を自力で十分行えない場合にのみ、あくまで「最終手段」として、ユーロ圏諸国による2国間融資および国際通貨基金(IMF)による融資が行われる。対ギリシャ金融支援におけるIMFの関与は、メルケル独首相が国内事情をにらんで最近主張するようになり、サルコジ仏大統領の同意を事前に取りつけていたものである。
ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領によると、支援策が実際に発動される場合の対ギリシャ融資額は、ユーロ圏諸国による2国間融資がかなりの部分を占めるという。サルコジ仏大統領は、ユーロ圏が3分の2、IMFが3分の1になるだろう、と述べた。一部で出ていたユーロ圏とIMFで折半という話にならなかったのは、支援の主導権を握るのはあくまでユーロ圏であり、IMFは「従」だという体裁を取りたかったからだろう。
だが、ギリシャ支援策を作り上げる上で、最終的にIMFの関与を認めざるを得なかったことで、欧州統一通貨ユーロが失ったものは大きいのではないかと、筆者は考えている。今回の対ギリシャ支援策合意によってユーロ圏が受けるメリットとデメリットを列挙してみよう。
【メリット】
・ギリシャのデフォルト(債務不履行)リスクが事実上なくなった。
・ギリシャからポルトガルなど南欧全域への危機波及の流れに対し、歯止めになり得る。
・以上2点から、債券・為替市場の安定化が期待される。
【デメリット】
・「ユーロ圏は身内の問題を自力・独力では解決できなかった」という見方が成り立つ。
・IMFは融資実行条件(コンディショナリティー)として、ユーロ圏の今後の経済政策運営に対し、一定の発言力を有することになる。
・欧州通貨統合の制度的な欠陥は、今回の支援策の枠組みで解決されたわけではない。
・以上3点から、ユーロという通貨について、信認問題が今後もくすぶり続ける。
ユーロ圏首脳が達した合意に対し、トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁は記者会見で、「有効な解決策が見出されたことを喜ばしく思う」とした。しかし、IMF融資を併用する支援策が実際には発動されないで済むよう、トリシェ総裁は強く願っているのではないか。同総裁は今回の合意が成立する直前のテレビインタビューで、「IMFやその他の機関がユーログループや各国政府に代わって責任を負うことは、明らかに、非常に悪いことだ」と強調していた(この発言が、3月25日の米国市場で、ユーロが対ドルで一時1.3267ドルまで急落し、米国株が前日比上昇幅を取引終了直前に急縮小する材料になった)。