文部科学省が2007年度から実施している「全国学力テスト」(全国学力・学習状況調査)が揺れている。同テストはすべての小学6年生と中学3年生を対象に実施されていたが、鳩山政権は「全員調査は予算の無駄遣い」として、2010年4月20日に実施するテストから、対象数を絞り込んだ抽出方式に変更する。

 学力テストの歴史をひもとくと、何度も大幅に変更されており、方向転換は今回に限ったことではない。繰り返される政策転換からは、政治に翻弄される学力テストの悲哀が見て取れる。(文中敬称略)

「脱ゆとり教育」で議論が開始

中山国交相、問題発言で辞任 在職はわずか5日

「学力テスト」の実施を打ち出した中山成彬氏。「日教組が強いところは成績が悪い」など問題発言を繰り返し、麻生政権の国土交通相をわずか5日で辞任〔AFPBB News

 学力テストは、国語と算数・数学の2科目で知識や応用力を問うほか、生活習慣や学習環境も併せて調査している。成績は全国平均に加え、都道府県別の数字も発表される。2009年度は、小学6年と中学3年の全員約230万人が受験した。

 学力テスト導入の背景には政治の圧力があった。「ゆとり教育」で学力低下が顕著となったため、小泉政権で文部科学相を務めていた中山成彬が2004年11月にテストの実施を表明したのが始まりだ。

 後に、中山が「日教組の強いところは成績が低い」と失言して、麻生太郎内閣の国土交通相をわずか5日で辞任したことが象徴するように、中山はかねてより日教組に批判的な立場を取る半面、学力低下に対しても強い危機感を抱いていた。学力テストの狙いは「学力を世界のトップに押し上げるため、子どもに競い合う意識を植え付ける」という点にあった。

 同様の考えは自民党の一部政治家に共有されていた。安倍晋三が首相就任前に発刊した『美しい国へ』(文春新書)でも以下のくだりが出てくる。

「基礎学力の徹底が必要」と、首相在任中に教育再生会議を発足。しかし、議論が深まらないうちに体調を理由に首相を辞任してしまった

 「ゆとり教育で落ちた学力は授業時間の増加で取り戻さなければならない。そのため、学習指導要領を見直して基礎学力を徹底させる必要がある。また全国的な学力調査を実施、その結果を公表するようにすべきではないか。結果が悪い学校には支援措置を講じ、改善が見られない場合、教員の入れ替えなどを強制的に行えるようにすべきだろう」

 実際、安倍は首相就任後に「教育再生会議」を発足させ、授業時間数の10%増などを提言させたほか、学校選択制の拡大など競争原理に立った教育改革を目指した。政権の崩壊で議論は宙に浮いてしまったが、ゆとり教育による学力低下への危機感と公教育に対する信頼回復のため、学校や子どもの競争意識を高める政策として、全員参加の学力テストが浮上したことが分かる。