トヨタ自動車の大量リコール問題が依然としてテレビ、新聞紙面を賑わしている。
これまでのトヨタの対応がどれほどユーザーに対して不誠実だったかということはさておき、記者会見や報道の中から、新車開発に関する興味深い事実が浮かび上がってきた。それは、環境・安全に代表される性能を電子制御によって向上させている最近の自動車は、開発担当エンジニアの想定を超える車両挙動を発生することが決して珍しい出来事ではなくなったということだ。
コスト削減のために、メーカーが車両の仕上がりを確かめるプロセスを省くような手抜きを意図的にしているわけではない。開発陣のスキルが、非常に高度化した電子制御のすべてを掌握するほどのレベルに達していない、つまり技術の使いこなし方がまだこなれていないことが問題なのだ。
開発プログラムの穴
2010年2月9日のお詫び会見。トヨタ自動車の佐々木副社長(写真左)は、開発段階で不具合の見逃しがあったことを認めた〔AFPBB News〕
なぜ電子制御を確実に使いこなせないのか。
「(ブレーキの不具合と指摘される現象を)見逃したことは申し訳ない」
トヨタが2010年2月9日に東京本社で開いた「お詫び会見」の席で、品質保証を担当する佐々木眞一副社長は、開発段階で見落としがあったことを認めた。
世界の品質リーダーと賞賛されたトヨタがハイブリッド車の本格普及を目指し、社運を懸けて開発した新型プリウスで「見落とし」が生じたのだ。そこに、現在の自動車エンジニアリングの悩ましさが垣間見られる。
不具合が見つかったプリウスのエンジン〔AFPBB News〕
問題となっている症状は、低速で軽くブレーキを掛けながら減速している最中に滑りやすい路面に差し掛かった時に発生する。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が作動してブレーキの力が弱まり、停止距離がドライバーの期待以上に伸びてしまうのだ。
プリウスは回生ブレーキと油圧ブレーキという2種類のブレーキを電子制御で使い分けて燃費を稼いでいる。トヨタは、このような複雑な制御を確実に実行できるように、長い時間を掛けてテストを重ねたはずだ。それでも不具合を見落としてしまったのは、問題の症状が低速で発生したためだ。
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