日本と同様、韓国も少子高齢化に直面している。2009年の国連人口基金「世界人口白書」によれば、韓国の合計特殊出生率1.22はボスニア・ヘルツェゴビナの1.21に次いで、185カ国の下から2番目。保守的な価値観が根強く残り、子育てを取り巻く社会的・経済的問題が山積する。出産を躊躇するのは、女性の合理的な判断なのだろう。少子化問題を解決するための一つのカギは、女性に負担の重い保守的社会から大転換を図り、移民への開放度を引き上げることである。
出生率の低下に苦しむ韓国、日本、イタリアなどには共通点がある。急激な経済発展に価値観の変化が追いつかず、男性中心の社会構造が色濃く残っていることだ。
経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国では、女性の国会議員や管理職の割合が平均30.2%(2009年)に達する。これに対し、韓国や日本ではほんの1割にすぎない。「結婚したら仕事を辞めますか」と女性に質問して、差別発言にならない国は日本ぐらいだろう。イタリアでも女性が家事や子育てを担う分、男性よりレジャー時間が平均80分少ないという統計がある。
少子化は国内市場の縮小や潜在成長力と国際競争力の低下、そして国力の衰退を招く。国境を越えて労働力が自由に移動する時代、いかにして国力を維持するのか抜本的な政策転換を迫られている。それなのに日本は「子ども手当」といった個別施策にとどまり、将来どういう国を目指すのか全体像を示せていない。
韓国の社会統合政策、移民を「隣人」として受け入れ
一方、韓国は移民を容認する社会統合政策を掲げ、大きな政策転換を遂げつつある。
そのきっかけは、2004年の盧武鉉大統領の就任。人権派弁護士出身の盧氏がまず手をつけたのは、外国人労働者の置かれている劣悪な環境改善だ。それまでの発想を切り替え、移民の人権を重視する新基本政策を2006年に発表し、保守的社会からの転換に向けて舵を切った。
移民に対する認識を「一時的労働者」から「隣人」に改め、同質で均一な社会から多文化に尊敬の念を持つ社会への移行を目指す。移民政策の所轄を官庁から外交政策委員会へ移すなど、それまでは日常茶飯事の官僚による恣意的な介入を極力排除した。