日本航空の再建に続き、PHS大手ウィルコム支援にも名前が挙がり、一躍、脚光を浴びた「企業再生支援機構」。業務の性格上、秘密主義が徹底されていることもあり、「動きを読み切れない」(大手金融機関幹部)、ミステリアスな存在だ。

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企業再生支援機構は救世主なのか? オオカミなのか?〔AFPBB News

 最近、金融関係者の間では、「赤ずきんちゃん」の寓話になぞらえて、相次いで大型案件に乗り出した支援機構をちゃかす「なんちゃってストーリー」が流行っている。

赤ずきん) お婆さんの窓口はなぜそれほど広いの?
機構) 全国の様々な企業に門戸を開いているからさ。

) お婆さんの投融資枠はなぜそんなに大きいの?
機構) どんな企業からの要請にも応じられるようにするためさ。

) お婆さんの家にはどうして法律家がたくさんいるの?
機構) お前たちを法的整理に追い込むためさ!

 果たして支援機構は日本経済を支える救世主なのか、赤ずきんちゃんを法的整理に追い込む狼なのか――見方は分かれる。

 支援機構の本当の評価が固まるのは5年の活動期間を終えた後だろう。だが、現時点で機構という存在を読み解く鍵は「形を変えたソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府ファンド)」、そして付け加えるならば「事前調整(プリパッケージ)型の法的整理の伝道師」と言えるかもしれない。

「地域再生」から「日本買い支え」に役割が転換?

安倍政権期は、都市と地方の格差の解消のための「地方版・産業再生機構」を目指していた

 そもそも企業再生支援機構は2007年5月、自民党の安倍晋三政権下の経済財政諮問会議で打ち出された「地域力再生機構」構想が出発点だった。

 当時は、小泉構造改革の揺り戻しで「格差是正」に大きな関心が集まっていた時期。都市と地方の地域間格差が広がったことへの処方箋として、「債務超過状態の地方中小企業に地方版・再生機構で甦らせる」ことを目指した。

 ところが、当時・野党だった民主党が、支援対象企業の基準が明確でないことなどを理由に反対。2008年通常国会ではろくに審議されないまま法案がたな晒しにされていた頃で、リーマン・ショックに見舞われる。

 金融危機よる世界的な経済停滞で、市場は凍りつき、欧米の投資資金が撤退。「リスクマネーの出し手は日本政策投資銀行だけ」となった。「地域再生」どころか、日本経済全体が崖っぷちに立たされた。