春闘の季節を迎えた。
早々に労働側はベアをあきらめ、「定昇=賃金カーブ」の維持が焦点となっている。一方、経営側も「過剰労働力=企業内失業者」を強調し、その維持には賃金コストの横這いが前提だと主張する。労使双方が雇用確保を前面に押し出すという状況だが、筆者は強い違和感を覚える。
現在、日本ではデフレ傾向が中期的に継続し、それが日本の経営者を精神的に圧迫している。これではダイナミックな経済の成長メカニズムを描きにくい。主因は先進国経済の急速な落ち込みと、そこそこ続いた好景気の息切れという景気波動である。
デフレ傾向の根源、ホテル宿泊代や地方公務員給与
しかしそれとは別に、景気波動とは質を異にする構造要因があるように思う。
株や土地などの資産価格を除けば、バブル期を含めても日本では相当長期にわたり、物価が安定もしくは低下傾向にある。
さらに物価を分解して考えると、モノの価格はかなり早い段階で低下し、その後は低位安定するイメージが出来上がっている。これは「内外価格差」が国際的な問題となり、流通経路の合理化が進んだ段階で起きた「価格破壊」にほかならない。
これに対し、サービス価格はバブル崩壊後から低下傾向を強め始めた。個人的な実感としては、ホテル宿泊代の低下が著しい。もちろん土地価格の下落分もあろうが、海外出張で支払う料金と比較すると、国内出張のホテル代は円高を勘案しても相当に安い。
こうしたサービス価格の下落は、主に賃金の低下に因るところが大きい。地方ではサービス業の最大の担い手が自治体であるケースも多く、このところの公務員給与の低下傾向が足元のデフレ傾向の根源にもなっている。