竹中平蔵氏(元金融・経済財政担当相)を電話ゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。

 世界に広がる格差問題や、日本が今直面するTPP交渉参加問題などについて語ったトーク内容をお伝えする。

財務省の「増税行き」バスに乗る野田首相

連立与党、過半数割れへ 参院選

消費税引き上げを「国際公約」した安住財務相(写真は2010年選対委員長当時)〔AFPBB News

中山 安住(淳)財務相が参加したG20(20カ国・地域 財務相・中央銀行総裁会議)で、安住氏は世界に向けて「来年にも消費税率を10%に引き上げる法律を成立させる」と発言しました。民主党の増税路線についてどう思われますか?

竹中 安住さんは、ご自身の意思を表明するのは結構ですが、これが「国際公約」にあたるとしたら大問題です。民主党はG20以前に国民に増税を公約していたわけではありませんから、二枚舌を使ったことになります。

 今まで民主党政権は、高い目標を掲げるものの期待値と現実のギャップがあまりにひどく、国民の大きな不満を招いてきました。それが、野田(佳彦)政権になってからは、失政しないための努力は感じられますが、最初から国民の期待値を下げているようにも見えます。

 知人に聞いた面白い話があります。政治を自動車の運転に例えると、官僚が運転手であり、助手席に座る政治家が官僚に運転を指示することが「政治主導」にあたります。

 ところが民主党政権は政治主導を掲げながら、操作方法も知らないのに自分で運転して次々に事故を起こしてしまった。

 そしてそれに懲りた野田総理は、「財務省が運行する、目的地が増税の路線バス」に乗り換えたというわけです。まさに、「羹に懲りて膾を吹く」になり過ぎていますね。

世界的な反格差社会デモを引き起こした2つの原因

中山 「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」を合言葉に、ニューヨークのウォール街ではじまった反格差社会デモが、今世界中に拡大しています。

竹中 その原因の1つに、1990年以降、世界経済が競争時代に突入したことが挙げられます。

 東西冷戦構造下の世界は、市場経済と計画経済に二分化されていました。市場経済人口は約27億人でしたが、ベルリンの壁が89年に崩壊したことで、計画経済側の人間が一斉に流入してきた。

 現在ではほとんどの国が市場経済国であり、その人口は60億人を超えます。市場は2倍になったが競争相手も倍増し、私たちは今、競争圧力の激化にさらされているのです。