オバマ米大統領が発表した新たな金融機関規制案やギリシャの財政赤字問題などから、海外市場はこのところダイナミックな動きになっている。1月31日に任期切れを控えているにもかかわらずバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の上院本会議での再任承認採決が先送りになっていることも追加的な不安材料になり、22日にはニューヨークダウ工業株30種平均が2日連続で前日比▲200ドルを超える下げ幅を記録。3日間で▲550ドルを超えるNYダウ大幅下落は2008年11月以来のことである。米国やドイツの国債利回りは「質への逃避」から切り下がっており、独2年債利回りは22日に一時1.08%まで低下した。また、外為市場では、ドルもユーロも買いにくい雰囲気が強まる中で、消去法的に円が買われる展開。ドル/円は89円台、ユーロ/円は126円台まで円高が一時進行した。だが、国内債券相場は22日時点では、動意に乏しいもみ合いにとどまっていた。

 円の短期金利は、低下余地を断続的に探っている。22日には日銀が公表している東京レポレートのスポットネクスト物(S/N;2営業日後スタートの翌日物)が0.106%に低下し、昨年12月3日(新型オペ導入を決定した日銀臨時金融政策決定会合の翌々日)と並ぶ、過去最低水準になった。国庫短期証券の募入最高利回りや交付税特別会計借入金入札の募入最高利率もじわじわと切り下がっている。主要銀行貸出動向アンケート調査の結果や、12月の貸出・資金吸収動向等速報で示された銀行の「預貸ギャップ」指標の過去最大更新からみて、銀行勢の手元資金は潤沢。しかも、当座預金残高を15兆円前後の水準に維持する潤沢な資金供給を日銀が続けている(白川方明日銀総裁が「広義の量的緩和」という言い回しを用いたことが想起される)。大量の運用資金が短期金融市場に滞留している状態だと推測される。

 財政政策の面では、一部の市場参加者が警戒している2010年度入り後早々の(つまり4-6月期の)補正予算編成(および国債増発)が、財務相の国会答弁によって明確に否定された。21日の衆院予算委員会で、連立与党の一角である国民新党(2009年度2次補正予算および2010年度予算の編成過程で積極財政を主張した)の下地幹郎政調会長が、「4月に2010年度補正予算を組むとの見方が2009年度2次補正予算や2010年度本予算の効果を減殺させる」として質問。菅直人副総理・財務・経済財政相は、「私のところには本予算のあと、すぐ補正を組むという話はまったくない。私の頭の中にも、まったくそのかけらもない」と明言した(ロイター)。2010年度予算案の中に、緊急に景気対策を発動するための枠として国庫債務負担行為を含めて計2兆円が計上されていることや、通常国会会期末までの時間的な余裕のなさなどを考えると、2010年度1次補正予算が早期に編成される可能性はほとんどないというのが、筆者の考えである。とはいえ、予算を担当している政治力のある閣僚から、しかも財政積極派の国民新党が関与する形で、債券市場に安心感を与えようとするメッセージが発せられたことは、本来は注目に値する話である。ところが、この菅発言を材料に債券買いが強まるという流れになることはなかった。