本日(2009年12月18日)午後、東京地裁で、小沢一郎民主党幹事長の公設第一秘書の大久保隆規氏の政治資金規正法違反事件の第1回公判が開かれた。
検察側の立証方法に重大な問題あり
今年3月3日、この事件で、東京地検特捜部は、当時民主党代表だった小沢氏の公設秘書の大久保氏を逮捕し、3月24日、大久保氏を起訴した。そして、この起訴を機に、小沢氏の責任を問う声が高まり、5月の連休明けには小沢氏は代表辞任に追い込まれた。
一方、この事件については、当初から違反の成否や事件の重大性・悪質性への疑問や自民党側を捜査の対象としないことの不公平性が指摘され、当時の漆間巌・官房副長官の発言や麻生太郎首相自身の国会答弁などもあって、政府与党側の政治的意図に基づく捜査であるかのように批判された。
そのような捜査に、国民が政府・与党と検察の権力の結託についての「不気味さ」を感じたことも、総選挙で自民党の惨敗、民主党の圧勝という結果の1つの要因にもなったと見ることも可能だ。
このような経過を経て今回の第1回公判を迎えた。
被告人・弁護人側は、公訴事実を全面的に争い、無罪を主張。一方、検察は、起訴事実の政治資金規正法違反についての立証に加えて、政治資金の寄付と公共工事の談合受注との対価関係を立証することによって事件の重大性・悪質性を強調したが、そこでの検察官の立証の在り方には重大な問題があると言わざるを得ない。
事件の争点は2つ
この事件の争点は、大きく2つに分かれる。
第1に、違反の成否、つまり有罪か無罪かという点である。問題にされた西松建設のOBが代表を務める政治団体名義の寄付についての政治資金収支報告書の記載が虚偽と言えるか、つまり、その団体が西松建設のダミーで実体がなかったと言えるかどうか、そして、虚偽であったとしても、それを大久保氏が認識していたかどうかがポイントである。
そして、第2に、事件が政治資金規正法違反事件として重大で悪質なものと言えるのかどうかという点である。この点については、被疑事実とされている寄付の金額が過去の政治家の政治資金の事件と比較して僅少であったことから、強制捜査を行うほどの事件であったのかどうかが問題となった。
見過ごしてはならないのは、今年の5月に開始された政治資金の寄付者の側の西松建設の國澤幹雄元社長らの公判の経過と、判決の内容である。経営上の問題から株主総会前の早期の裁判終結を望んだ西松建設側は、公訴事実をすべて認め、検察側の証拠請求にすべて同意して、執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。