未来の食生活は私たちの「行動」にかかっている

ジェーン・グドール氏が「天然食材の危機」に警鐘

2011.09.30(Fri) 藤田 貢崇
筆者プロフィール&コラム概要

 大量の農薬が使われた野菜や果物、ホルモン剤や抗生物質がたっぷり投与されていた畜産物、脂肪と砂糖がふんだんに使われたファストフード。

 輸送システムの発達で、食材は海を越えて届けられ、そうした食材には保存料が使われていたり、遺伝子が組み換えられていたりしていることもある。さらに食材がどのように作られるのか見たことがない子供たちは、ジャガイモが畑の土の中にできるのか、木になるものなのか、分からない・・・。

 上に書いたことは、決して大げさなことではない。現実のものだ。

 加えて現代は、食材の生産現場、販売店、さらに消費者も「効率」や「利便性」を追い求めている。大量の農薬や抗生物質を使って効率的に生産し、大量の保存料で食材や加工食品が長持ちするように販売し、いつでも、どこでも、様々な食べ物を手に入れる。

 このサイクルから抜け出すことは、その業界での「敗者」を意味するので、簡単なことではない。消費者も、そういう生活が文化的だと考えているので、やめられない。

 悪循環のサイクルが出来上がっているのだ。

「巧妙」なビジネスモデルで一大産業に育った遺伝子組み換え食品

ジェーン・グドールの健やかな食卓』(ジェーン・グドール、ゲリー・マカボイ、ゲイル・ハドソン著、柳下貢崇、田中美佳子訳、日経BP社、1900円、税別)

 私はこのたび出版された『ジェーン・グドールの健やかな直卓』という本に翻訳者の1人として関わった。本書は、そんな現代の食生活が果たして本当に望ましいものなのかを見つめ直し、未来の人類が食べ続けていくことができるのかを考えさせ、私たちの健康にとってどんな影響があるのかを教えてくれる。

 著者の科学者ジェーン・グドール氏は、チンパンジー研究の世界的権威で、国際的に著名な天然資源の保護論者だ。彼女の的確で思慮深い観点が、様々な事例と客観的なデータで裏付けされており、一層説得力のある内容となっている。

 この本によれば、遺伝子組み換え作物はすでに広く浸透しており、米国では大豆の81%、トウモロコシの40%、綿花の73%が遺伝子組み換え作物だという。

 遺伝子組み換え食品が健康に及ぼす影響がまったくないと結論付けられているわけではない。しかし、この遺伝子組み換え技術は、一大産業として大成功を収めた。

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ジャーナリスト・翻訳家。科学技術や教育などの分野を中心に、数々の寄稿と翻訳を手掛ける。日本科学技術ジャーナリスト会議・理事。サイエンス映像学会・理事。2011年より法政大学経済学部教授。博士(理学)。この夏、動物行動学者ジェーン・グドールの食をテーマとした翻訳書も出版の予定。


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