金融ビジネス関連のオフィスが集まるグランドセントラル駅周辺(筆者撮影)

 「ニューヨークの景気はどうですか」――。しばしば受ける質問なのだが、そのたびに、答えに窮してしまう。確かにニューヨークも不況だ。しかし、ニューヨークの街には簡単に一括りにすることができない「多様性」がある。

 先日、ある投資ファンドを訪れる機会があった。ミッドタウンのグランドセントラル駅近くにオフィスを構え、数十年の歴史を持つファンドだ。

 オフィス内がずいぶんスカスカなので聞いてみると、小声で「人員削減をした」と教えてくれた。2フロアにわたるオフィスでは、かつて約100人のスタッフが働いていたが、現在は10人ほどしかいないという。

商業スペースのテナントを求めるサイン(筆者撮影)

 リース契約が数年残っているものの、又貸しする先も見つからないため、上階のフロアは完全に空室の状態だ。下の階も利用しているのは数部屋のみ。空き部屋には使わない机やパソコンなどが無造作に積み上げられていた。

 同ファンドは2008年の金融危機で大きな損失を出し、その後断続的にオペレーションを縮小した。ブローカー業務がもう一つのビジネスの軸だが、トレードのボリュームが激減するのに伴い、ブローカー収入もわずかになった。現在は、数人のセールスとブローカーがひっそりと仕事をしている。スタッフの大部分を解雇したにもかかわらず、今年は損失を計上する見込みだという。

金融危機を乗り越えて拡大中のヘッジファンドも

 同じミッドタウンにある筆者が時々出入りするヘッジファンドは、最近、新オフィスに引っ越した。移転先は数年前に完成したばかりのビルの28階。以前のオフィスよりも格段に広く快適な空間になっている。案内された会議室からはセントラルパークが眼下に広がり、「いい眺めでしょう」と言いながら担当者が入ってきた。