民主党幹事長の小沢一郎は、鳩山政権を実質的に支配する「闇将軍」である。いわば事実上の最高権力者。その小沢に対する批判や不満の声は、党内からほとんど表に出てこない。やっとベテラン議員から、ポツポツと声が聞こえ始めた程度だ。
新政権が失速するのも、首相・鳩山由紀夫が小沢に気兼ねし、官邸主導でリーダーシップを発揮できないからだ。鳩山は小沢に頭が上がらない。まさに権力の「二重構造」であり、それは小沢ら旧竹下派幹部が官邸をコントロールした自民党政権時代や、小沢中心の連立与党幹部が支えた細川護熙政権時代ともよく似ている。再び権力掌握に成功した小沢の「暴走」は誰にも止められないのか…(敬称略)
小沢に「5+5=15」と言われれば・・・
2009年11月4日、民主党前最高顧問の渡部恒三は福岡市内の講演で久々に思いのたけをぶちまけた。
「与党になったと張り切っても、忙しいのは大臣、副大臣、政務官。それ以外はみんな暇だ。陳情は幹事長室一本(に集中させる)ということで、民主党議員は何をするのか」「(民主党議員は)小沢一郎君が右と言えば右。左と言えば左。5足す5は15と言われれば、『ハイ』と言っとけばいい」
その5日前、産経新聞に載った渡部のインタビュー記事(10月30日付)の見出しは、「『小沢君への意見』今は封印」。渡部は「小沢君への意見だって? 俺に言わせるのは早いよ。それは今、鳩山政権がうまくいってるからだ」と小沢批判は避けていた。
同紙には「(小沢君が)『5足す5が15』と言ったらノーって言わないと民主主義ではないんだな」とも語っていた。その直後、「小沢が『5足す5は15』と言えば『ハイ』と言っとけばいい」と渡部が講演で語ったのは、もちろん今の「小沢独裁」を痛烈に皮肉ったものだ。
民主党政調の廃止、最大の失敗?
小沢は幹事長就任に当たり、鳩山から党運営や選挙対策、国会運営の一切を任された。その一方で、小沢は内閣や政策決定には口を出さない方針を決めた。
民主党はマニフェスト(政権公約)の中で鳩山政権構想5原則の1つとして「政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ」と明記した。