今年小学校に上がったばかりの甥っ子は世界地図や国旗に詳しい。アメリカやインドは言うに及ばず、トリニダード・トバゴの場所も知っているし、バヌアツ共和国の国旗も言い当てることができる。熱心な母親による早期教育のたまものだ。
世界地図のパズルを組み合わせている甥っ子にソマリアはどこだと訊ねてみた。彼はためらいもなくアフリカの逆三角形の右上あたりからタツノオトシゴのような形をしたピースを取り出し、得意げにかざしてみせる。グッジョブ。
ただ、彼はこの国や周辺諸国で1000万人以上の人が飢餓状態にあることは知らない。それも致し方ないことで、彼の最大の情報源であるテレビは最近までこのことをほとんど報じてこなかったからだ。
多くの日本人が知らないソマリアの飢饉
この7歳児に限ったことではない。大人も含めて日本人の大多数はおそらくこの飢饉のことを知らない。あるいは、どこかで目にしていたとしてもほとんど念頭には上っていないと思う。ソマリアの場所すらどこにあるか知らない人も少なくないだろう。
「ソマリアって伝染病のこと?」と頓珍漢なことを言い出す人もいた。たぶんマラリアと勘違いしている。
一般大衆だけでなく、マスコミでさえ国際部でアフリカを扱っている人を除けばへたをするとこの飢饉のことをまったく知らないか、あるいは意識していなかったりする。
懇意の記者に訊ねてみた。ソマリアと聞いて何を連想するかと。
「シーレーンですかね」と彼は少し自信なさげに答えた。「海賊対策・・・ですよね?」
確かに、ソマリアといえばソマリア沖の海賊対策。経済記者としての彼の視点は間違っていない。