税の負担率は、数字だけを比較すれば確かに高い。しかし、筆者は「税金が高い」とぼやくスウェーデン人を1人として見たことがない。国民の多くが「(政府ではなく)自分たちが選択したことだから」「自分の将来や子どもに返ってくるものだから」と認識し、不満を感じる人はほとんどいないように見える。
「重い税負担が国民の肩にのしかかっている」と批判するのは、国外のとりわけ日本と米国の学者と政治家ではあるまいか。
結婚式や洗礼式でさえ・・・生活にカネのかからない国
実際に住んでいて感じるのは、「低所得者ほど税をきちんと納めれば、それ以上のサービスが返ってくる」「基本的に生活にカネがかからない国だ」ということである。
市役所で職員の立ち会いの下、筆者は簡単な結婚式を挙げ、3人の子どもは教会で洗礼式を行った。そういったセレモニーにも、一切コストがかかっていない。式の時に子どもに着せる服や、参列者に簡単な食事とコーヒーを振る舞う会場ですら、教会がタダで貸してくれた。
氷のチャペルで結婚式(スウェーデンの「アイスホテル」〔AFPBB News〕
と言っても、カネをかけて盛大な結婚式を挙げるカップルはたくさんいる。日本のお宮参りやお食い初めに近い洗礼式では、多くの親が赤ん坊の豪奢な衣装を自前で用意しているようだが・・・。
筆者の子どもは1歳時から託児所へ行った。少人数を預かってくれるところが歩いて数分以内に何軒もあり、負担額は所得に応じて決まる。私も夫も学生だったため、極貧に近い層に分類されており、子ども2人を9~17時と預けても1カ月に数千円程度。「これでは子どものおやつ代にも足りないのではないか」と驚いたものだ。
スウェーデンで建設中の完全木造集合住宅〔AFPBB News〕
アパートには、地下に大きな洗濯室と乾燥室があることが多い。住民が共同で使えるから、自分で機械を買う必要はない。室内には冷蔵庫や冷凍庫、オーブン、食器棚なども大抵は備え付けだ。したがって、引っ越しも非常に楽になる。
出産後は、夫と交代で育児休暇を取った。休暇中は働いていた時の給与の最大約80%を国が保証してくれる。ミルクやパン、チーズなどの基本的な食料は高くないから、贅沢さえしなければ十分に従来通りの生活ができる。
夕飯作り・買い物は夫の担当、数字で測れない「幸福度」

「主夫」が活躍する国(スウェーデン・ボロース市内のスーパー、筆者撮影)「男女の平等や女性の社会進出が進んだ結果、福祉国家は家族を解体した」というのは本当だろうか。
筆者の体調が悪くなった時、夫は私より先に「妊娠だ」と看破した。性教育も含め、徹底した「男女平等教育」の成果を垣間見たとの思いがした。出産時には夫が終始立ち会い、3人の子のへその緒も彼が切っている。
男と女はもちろん生物学的に差異があり、それは出産という行為において最も顕著だろう。だが、この国で男女の社会的な性差は限りなく縮小され、この「聖域」ギリギリの所まで来ている。
1週間のうち5日は夫が夕飯を作り、スーパーでの買い物もほとんど彼が担う。スウェーデン語が面倒な私の代わりに、子どもの学校の手続きや先生との話し合いも、ほぼすべて夫が主導している。
これは我が家に限ったことではない。スウェーデンで家庭を持ち、生活している日本人女性は「今さら日本には行けないわ」「日本で子育てできないよね~」と口を揃える。
これを「男女の役割の喪失」あるいは「家族の解体」と定義するのは自由だ。その一方で、所得やGDPといった数字だけで「幸福度」が測れるものでもない。スウェーデン・モデルは「生活インフラ」と「セーフティーネット」をキメ細かく充実させながら、進化を続けてきた。それを可能にした原動力は、やはり「教育」なのだ。
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