会社が一番大切にすべきなのは、株主でも顧客でもなく、社員です。そして2番目は外注、下請け企業の人たちです。『日本でいちばん大切にしたい会社』では、そうした「正しい経営」を行っている全国の企業を紹介しました。

 この本を読んだ多くの人からメールをいただきました。半分は経営者の方々でした。「私の会社がなぜダメか、その理由が理解できた」という人が大勢いました。また、ほんのわずかですが、「今まで無我夢中で経営してきたけど、正しかったということを証明してくれた」という人もいました。

 経営者以外の方からも多くのメールが送られてきました。「この本を読んで会社に辞表を出した」「経営者になることを決意した」「息子や娘に企業を見る目を教えることができた」といった声がたくさんありました。

 こうしたメールを元に、私は中小企業の経営者たちに講演でよく言うんです。

 「この本はあなたがたの社員も読んでいますよ。将来社員となる学生たちも、あなたがたの商品を買ってくれているお父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんも読んでいるんですよ」と。

 つまり、一般の人たちが「正しい会社とは」「経営とは何か」を理解するようになったということです。

 それなのにいつまでも経営者が「株主のため」だとか「顧客が第一」だとか言ってると、社員は辞めていきます。辞めないまでも、生産性をどんどん下げていきます。そうなると、価値ある商品は生まれません。結果的にお客さんが離れて、売り上げが下がっていきます。

 逆に「正しい経営」をしている会社は社員のモチベーションが高く、魅力的な商品を次々に開発します。日本各地はもとより世界中から入社したいという人がやって来ます。

 そうした会社になれるかどうかは、業種は関係ありません。そして、日本のどこにあるのかも関係ないのです。

地方経済が疲弊する原因は地方自身にある

 日本の地方経済が疲弊しています。私に言わせれば、それは中央の政治というよりも、むしろ地方自身にも問題が大きいと思います。具体的には、地方行政の問題と、地方にある企業自身の問題です。

 まず地域産業を支援する地方自治体にも、問題があります。 「地域づくり」というのはインフラを作ることではありません。魅力的な雇用空間を作ることに尽きます。