【写真特集】震災被災地で活動する自衛隊員ら

災害復旧に自衛隊員は八面六臂の活躍を見せている〔AFPBB News

 今般の東日本大震災に対する自衛隊の活躍にはまさに目を見張るものがある。

 昼夜を分かたぬ捜索・救難活動、誠を尽くすきめ細かい民生支援、自衛隊頼みの3K(きつい、きたない、きけん)作業に対する献身的な作業・・・。

 隊員諸官の真摯な立ち居振る舞いとそれらに対する国民の称賛の声を聞くにつけ、まさにこのような非常時のためにこそ自衛隊の存在価値があり自衛隊を養ってきたのだという自衛隊建設に携わってきた先達の感慨が偲ばれる。

 国内の災害派遣に限らず、自衛隊は人道的な貢献や国際的な安全保障環境の改善の観点から、国際協力の推進に寄与することを目的として国際緊急援助活動にも積極的に取り組んできている。

 このため、平素から事前に作成した計画に基づき多様な任務に対応できる態勢を維持している。

 ただし、これらの態勢を、特定の災害派遣や国際緊急援助活動に適応させることのみを念頭に置いて準備してきていると考えることは適切ではないし、自衛隊の本来任務を見誤ることになる。

 また、自衛隊に対する今般の国民の高い評価をもって、災害派遣や国際緊急援助活動こそ自衛隊に期待される第一の任務であると結論付けるのも過早である。

 自衛隊の第一の任務は、最も対応困難な本格侵略事態に対する所要の「防衛行動」である。この「防衛行動」を念頭に置いて、体制整備や隊員の教育・訓練を自衛隊創隊以来きちんと整えてきたからこそ、現在、平時に発生したいかなる事態にも迅速・的確に対応できてきたと考える方が妥当である。

 むしろ、今般の被災の機会を捉えて留意しなければならないのは、蓋然性は少なくなったと言われている本格侵略事態への対応に本当に遺漏はないのか、徹底的に検証する必要があるということである。

 今般の津波事案で、危機管理に「想定外」があってはならないということを我々は痛く思い知った。言うまでもなく「防衛行動」にも「想定外」があってはならないのである。

 今般の大震災という貴重な機会を捉え、国際緊急援助活動に焦点を当てて、我が国の安全保障に係る体制整備のあり方について考えてみたい。

国際社会における安全保障上の課題と軍事力の役割

 今日の国際社会は、伝統的な国家間の関係から新たな脅威や多様な事態に至るまで様々な課題に直面している。

 これらに対応するための軍事力の役割は、武力紛争の抑止と対処、紛争の予防から復興支援、大規模災害などに対する緊急支援などと多岐にわたっている。

 このような状況を踏まえ各国においては、多様化した役割・任務に対応するため、優先順位を考慮しつつ国力・国情に応じて軍事力の整備を図るとともに、国際社会における安全保障上の問題に関する国際協力・各種連携を図っている。

 我が国においても新たな安全保障環境を踏まえて、国際的な安全保障環境の改善のため自衛隊を主体的・積極的に活用することとしている。