当社のマネジャーミーティングで賛否両論の議題があるので私の意見を聞きたいという。「あるプロジェクトに関わっている技術者が、クライアントから夜間の作業を依頼された。今日、勤務することになっているのだが、作業をさせていいものだろうか」というのだ。

 管理部門からは、「契約では就業時間(9~18時)内の勤務となっている。22~8時の夜間に作業するのは、契約違反である。もし何か問題が起きたら、会社としては責任を負えない」と言う。

 その心配はよく分かる。実はその技術者はかつて働きすぎが原因で、軽度のうつ病を発症したことがあったのだ。

 技術部門は、私の判断に任せるという。「本人に確認したら、このプロジェクトでは断るわけにはいかないので、一番年少の自分が出ると言っています」とのことだった。

 営業部門は、作業に行くべきだと考えているようだ。「夜間の作業は他社では普通に行われていることです。日常茶飯事です。ここで契約とか労働基準法とか持ち出されても困ります」と不満顔だ。

 結局、その技術者には翌日1.5日分の振替代休を取ることを条件に働いてもらった。

IT企業でなぜこれほどうつ病の発症率が高いのか

 当社では、システム開発とは別に、ASPサービス(インターネットを通じて各種ソフトウエアの機能を提供するサービス)を提供している。その中の1つに「POD(Point of Depression)システム」がある。Web画面上の質問に答えてもらうことで、回答者の「うつ的症状」を判断するというものだ。

 PODのユーザー数は現在約80社で、述べ8万人に使用してもらっている。当社の解析データによると、IT企業のうつ病の発症率は一般企業の2倍にもなるのだ。

 なぜIT業界ではうつ病になってしまう人が多いのだろうか。