元オムロン取締役執行役員専務CFO兼グローバル戦略本部長(現 日本CFO協会 理事)の日戸興史氏(左)とANAホールディングス取締役専務執行役員グループCFOの中堀公博氏(撮影:榊水麗)
「全体最適な経営を目指すのは当然だ。だが実践するのは難しい」。元オムロン取締役CFOで、日本CFO協会理事や複数の上場企業の社外取締役を務める日戸興史氏は、多くの経営者と話をする中で、こんな言葉をよく耳にするという。企業はこの課題にどう対応していけばよいのか。創業の精神を失うことなく数々の危機を乗り越えてきたANAホールディングス(以下、ANAHD)。同社の取締役専務執行役員グループCFO・中堀公博氏との対談から、課題解決の糸口を探る。
理念やビジョンが大事、その根底には「共感」「腹落ち」が必要
日戸興史氏(以下、敬称略) 「徹底的な議論の末に企業理念を求心力の中核とし、理念に基づく明確なビジョンと高い目標を掲げる。その上で、経営陣を中心として会社が一丸となっていく」。全体最適な経営を目指すに当たり、オムロンに在籍していた当時の私はこんな考え方を重視していました。
ANAグループでも全体最適な経営につながる取り組みをされているようですが、どのような考えや方針で取り組まれているのでしょうか。
中堀公博氏(以下、敬称略) 当社グループでは、2023年度から新たに「ワクワクで満たされる世界を」という経営ビジョンを掲げています。
ビジョン策定に当たっては、まず「どんな企業グループになりたいか」「どんな社会を実現したいか」について、グループ内のさまざまな層に対して幅広くヒアリングしました。社内には20代から60代まで幅広い世代がいますし、職種も多岐にわたります。複数あるグループ会社も含めると、さらに多様な人財の集まりです。
当社では「共感」「腹落ち」という言葉をよく使います。きちんと腹落ちしていれば、目標が高かったり困難に直面したりしても、途中で心が折れたりしないからです。
ビジョン策定に当たっても、できるだけ多様な立場の人たちが、共感・腹落ちできるかどうか、を重視しました。そうして上がってきたキーワードを基に、経営会議で議論を重ね、結論に至っています。
実は議論の過程で、社外取締役の方から「ビジョンに『ワクワク』という表現は一般的ではないのでは?」という指摘をいただいたこともありました。それでもあえて、多くのメンバーの共感と腹落ちを重視し、ワクワクという表現を採用しています。







