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コーポレートガバナンスの狙いは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にある。その実現に向け、女性の活躍推進や社外取締役の活用に取り組む企業が増えているが、形骸化を指摘する声も少なくない。実効性の向上に必要な視点は何か。本稿では、『組織ガバナンスのインテリジェンス』(八田進二編著/同文舘出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。青山学院大学名誉教授の八田進二氏と味の素などで社外取締役を務める岩田喜美枝氏との対談を通じて、日本企業が抱えるガバナンスの課題を浮き彫りにする。
コーポレートガバナンス・コードの適用により、大企業では社外取締役の設置が進んでいる。岩田氏が役員就任の可否を判断する際に重視する3つの判断基準と企業への提言とは?
(役職、事実関係等は本書刊行時のままとしています)
■ 思考停止状態でガバナンス・コードを“遵守”していないか
『組織ガバナンスのインテリジェンス 』(同文舘出版)
八田 ところで、岩田さんは多くの企業から社外取締役への就任要請を受けておられるのではないかと思うのですが、オファーを受ける基準のようなものをお持ちでしょうか。
岩田 そうですね。私はお引き受けするかどうかの基準を3つ持っています。まずは、その会社が好きかどうか。その会社の役に立ちたいと思うかどうかです。
お引き受けしたからには、自分のそれまでの経験を総動員してお役に立ちたいと努力をします。取締役会では積極的に発言するように心がけています。反対意見がある場合でも遠慮なく発言するのが社外取締役の務めだと考えています。
2つ目は、その会社が社外取締役に何を期待しているのかです。言い換えると、「気づいたことがあれば、何でも言ってください」と言っていただける会社かどうかということです。数合わせのためだけに招聘され、「何も発言しないでほしい」というのがホンネの会社では、お引き受けする意味がありませんから。
私はWCD(Women Corporate Directors)にも所属していまして、そこでお会いする女性社外取締役のなかには、執行側の方針に異議を唱えたり、耳障りな意見を言ったりすると歓迎されないという悩みを持っている方もいます。
八田 先般の東京五輪組織委員会の場合はその典型でしたからね。






