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 コーポレートガバナンスの狙いは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にある。その実現に向け、女性の活躍推進や社外取締役の活用に取り組む企業が増えているが、形骸化を指摘する声も少なくない。実効性の向上に必要な視点は何か。本稿では、『組織ガバナンスのインテリジェンス』(八田進二編著/同文舘出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。青山学院大学名誉教授の八田進二氏と味の素などで社外取締役を務める岩田喜美枝氏との対談を通じて、日本企業が抱えるガバナンスの課題を浮き彫りにする。

 女性活躍の先駆者である岩田氏の目に、取締役会に一定割合の女性を求める現在のクオータ制度や取締役会の在り方はどう映るのか?
(役職、事実関係等は本書刊行時のままとしています)

厚労省から資生堂副社長へ「女性活躍推進計画」も策定

■「数値目標」成功のカギは女性育成を急ぐこと

八田 私は資生堂に対しては、かなり昔から「女性活用では最先端の会社」というイメージを持っていました。しかし、岩田さんが参加されて以降そういった計画を策定されたということは、その実、そうでもないということだったのでしょうか。

岩田 もちろん日本企業一般の水準と比較したら、トップクラスではありました。1990年代、福原義春さんが社長を務めた10年間に一大改革を実施しましたから。私が入社した当時は一気に4人の女性支社長を誕生させていました。経験や実力が物足りないと見られた人も含まれていたのですが、そのくらいの荒療治をしないと、壁は破れないと考えられたのでしょう。

八田 「クオータ制」(格差是正のために行うポジティブ・アクションのひとつで、マイノリティへの割り当てを強制的に行わせる手法)と同様の考え方ですね。結果はいかがでしたか。

岩田 全員が支社長として高い評価を得たわけではありませんでした。期待に応えられなかった人もいました。やはり、しっかり経験を積んでもらい、力をつけてから登用しないと貴重な人材を潰してしまいかねないということを痛感しましたね。