yu_photo / Shutterstock.com

 かつてないほど人材採用が難しくなり、採用活動そのものは成功しても、「いい人材を確保できない」と悩む経営者は少なくない。今や日本を代表する企業となった楽天も、創業期には人材不足に悩まされた。その課題を解決するため創業者・三木谷浩史氏が編み出したのが、従来の「仮説→実行→検証」に「仕組み化」を加えた楽天式「PDCA-S」である。

 楽天で店舗系システム開発部長として、急成長を支えた著者が執筆した『楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA-S』(福永博臣著/日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集。先の読めない時代に必要な臨機応変な組織開発と人材育成の秘訣とは?

変化を恐れない風土が成長を促す 社員の挑戦や提案を後押しする組織へ

楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA-S』(日本能率協会マネジメントセンター)

■ 会社の方針に沿った戦略をマネージャーに作らせることで幹部は育つ

 多くの企業では、戦略は経営者や経営幹部が作るものであり、マネージャーは与えられた目標を実行する立場と認識されています。しかし、組織を本気で強くしたい、次の成長ステージに進みたいと考えるのであれば、マネージャーにも戦略を考えさせることが必要です。

 階層化された戦略共有会を実施することで、各階層のマネージャーが上位の戦略・戦術を自分のチームのこととして具体化することが求められます。

 つまり、「トップの方針に沿った上で、自分のチームは何をどう進めるか」を、自分の頭で考え、整理し、言語化して部下に伝える。このプロセスを通じて、マネージャー自身が戦略的な視点を身につけていくのです。

 このとき、経営者や上位者が注意すべきなのは、「やり方(How)」まで細かく決めすぎないことです

 部下に仕事を任せる際、業務知識がありスキルの高いメンバーには、「何を達成するのか(What)」だけを伝えるにとどめ、「どうやるか(How)」は自分で考えさせることが人材育成の基本です。同じように、幹部候補となるマネージャーに対しても、経営者がやるべきことは目標や方針を示すことまでであり、戦略の立案は任せてみましょう。