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 かつてないほど人材採用が難しくなり、採用活動そのものは成功しても、「いい人材を確保できない」と悩む経営者は少なくない。今や日本を代表する企業となった楽天も、創業期には人材不足に悩まされた。その課題を解決するため創業者・三木谷浩史氏が編み出したのが、従来の「仮説→実行→検証」に「仕組み化」を加えた楽天式「PDCA-S」である。

 楽天で店舗系システム開発部長として、急成長を支えた著者が執筆した『楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA-S』(福永博臣著/日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集。社員と組織の能力を同時に伸ばしていくための「成長を再現する仕組み」を探る。

仕組み化がもたらす真の価値 急成長の鍵

楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA-S』(日本能率協会マネジメントセンター)

 多くの会社では、成長のために個々の社員の能力向上に頼りがちです。しかし、それだけでは一時的な成果にとどまり、組織全体の持続的な成長にはつながりません。

 本当に強い企業は、社員個々の能力を伸ばしながらも、それを組織としての資産に変えていく仕組みを持っています。本章では、個々の人材が、単なる「人的リソース」ではなく、企業を成長させる「人財」へと変わる仕組みとは何かについて見ていきます。

■ うまく行ったことを学ぶから、社員の成長が早い

 企業の成長には、社員一人ひとりのスキル向上が不可欠です。しかし、個々の社員が独自に試行錯誤しながら成長するには時間がかかります。効率的に成長を促すためには、「うまく行ったことを学び、再現する」仕組みが必要です。

「学ぶ」という言葉は、古くは「まねぶ」と言い、「真似る」ことだと言われています。望む結果を出している人の方法を学び、真似することは、最も速く成長する方法の一つです。

 これは仕事でも同じことで、成果を出している優秀な社員の「成果を生み出す違いは何か」を言語化することで、その他の社員がそれを真似し成長することができるようになります。個々の社員がゼロから学ぶよりも無駄なくスキルを習得することができるのです。