写真:Japan Innovation Review編集部

 世代や素材、販売チャネルの変化に合わせて、常に新しい潮流が生まれるアパレルの世界。国内外の業界事情に精通するファッションジャーナリストの久保雅裕氏による『アパレルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)から、一部を抜粋・再編集。流通、デジタル、サステナビリティまで、ビジネスパーソンが知っておきたい「教養としてのアパレル」を紹介する。

 団塊ジュニア、ミレニアル世代、Z世代――それぞれの時代を映す消費の形を、ファッションを軸にたどる。

古着から始まった消費意識の変化

アパレルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 さて「失われた30年」とともに社会人人生を送りはじめた団塊ジュニア、生まれた時から低成長な世の中しか知らないデジタルネイティブなミレニアル世代、そしてデジタルガジェットに囲まれて成長してきた完全デジタルネイティブのZ世代に焦点を当てて、消費性向を見ていきましょう。

 団塊ジュニアが社会に出て、活躍するようになった2000年代、彼らの青春期に影響を与え始めたのがセレクトショップでした。それ以前、つまり90年代前半までのアパレル専門店の主役は、アパレルメーカーの直営ショップが集う百貨店や丸井、パルコといった商業施設でしたが、それらの直営店とともに、鈴屋、三愛、アイマリオ、キャビンといった70年代から全国展開してきたナショナルチェーン専門店も主役としての役割をルミネなどの駅ビル、ファッションビルで担っていました。

 以前、外苑前駅近くの青山通りと外苑西通りの角には、鈴屋が作った「ベルコモンズ」というファッションビルもあるくらいでしたが、その隆盛ぶりに陰りが見え始めたのが90年代の後半でした。

 同時期に、「ア・ベイシング・エイプ」などの裏原系やファッションビル(Fビル)「109(マルキュー)」に象徴される「アルバローザ」「セシルマクビー」などのコギャルファッションで育った自由なカジュアルファッションを楽しむ団塊ジュニアにとっては、前述の旧世代のショップがどこか「よそよそしく」「枠にはめられたファッション」に感じられたのかもしれません。