Bangla press / Shutterstock.com

 世代や素材、販売チャネルの変化に合わせて、常に新しい潮流が生まれるアパレルの世界。国内外の業界事情に精通するファッションジャーナリストの久保雅裕氏による『アパレルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)から、一部を抜粋・再編集。流通、デジタル、サステナビリティまで、ビジネスパーソンが知っておきたい「教養としてのアパレル」を紹介する。

 EC(電子商取引)の急成長やZOZO TOWNの登場、そしてコロナ禍はアパレル業界に何をもたらしたか。イベントやコラボ、ポップアップといった取り組みで「体験」を提供する場へと進化するリアル店舗の新しい姿とは?

変わるリアル店舗の実態

アパレルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 近年、リアル店舗は大きな変革の波にさらされてきました。とくに2000年代のECの急成長やZOZOTOWN(ゾゾタウン)登場の第一段階、さらには2020年代のコロナ禍の影響による第二段階と、従来の店舗運営や販売スタイルが大きく変わってきました。

 このような変化により、リアル店舗が果たすべき役割が大きく進化しました。かつてのリアル店舗での商品陳列と説明・販売といった主要業務から、今やエンターテインメント的な要素を取り入れ、SNSを活用したブランドの発信、オムニチャネル化への対応など店の運営は多様化しています。

 このような環境下で、販売スタッフに求められるスキルや役割はますます高くなり、とくにインフルエンサー化した販売員の役割が注目されています。

 ECの発展は、まず消費者の購買行動に革命をもたらしました。実は2000年頃の業界人は「洋服がネットでなんか買える訳ないよね。だって、着てみないとサイズ感やフィット感も分からないし、触ってみないと写真だけでは質感や素材の良さなんて分からないしね」と本気で思っていました。

 しかし、ゾゾタウンをはじめとするオンラインショッピングプラットフォームは、消費者に新たな選択肢と利便性をもたらしました。ある大手ECのバイヤーがブランドの展示会に足を運んでも、「うちの商品はネットでは分かってもらえない、接客しないと難しい商品だから」と入場を断られるケース、いわゆる「門前払い」もしばしばだったそうです。