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 意思決定には不確実性がつきものだ。限られた情報を基に質の高い判断を下すには、数字の見立てや競合予測など多様なメソッドを駆使する必要がある。本稿では、早稲田大学名誉教授・内田和成氏が書いた『できるリーダーが意思決定の前に考えること』(内田和成著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。管理会計、ゲーム理論などの活用法を具体例とともに解説する。

 今回は、競合の出方を整理して考えるゲーム理論のマトリックス分析や、究極の意思決定を迫られる「囚人のジレンマ」を紹介する。

競争相手より利得を増やす 

できるリーダーが意思決定の前に考えること』(日経BP 日本経済新聞出版)

 競争相手の出方を予想しながら、最善の選択を探る手法の1つとして、ゲーム理論があります。駆け引きのあるゲームなどを対象とした数学的な分析手法として研究され、経済学、経営学、政治学などに応用されています。互いに相手より利得を増やそうとする競争の結果を予想する手法です。

 ゲーム理論のうち、ビジネスの意思決定によく応用されるのが、マトリックス形式による分析です。自社とライバルの2者が競っている場合の意思決定問題を対象にするもので、それぞれが得られる利得をもとにして、どういう意思決定をすればいいのかを探っていきます。

 たとえば、近隣で競い合っている小売店のA社とB社があって、両社とも手狭になっている駐車場の大型化を検討しているとしましょう。駐車場を大型化すれば、離れた地域からの集客増も期待できます。

 現状のままの場合、A社とB社はどちらも年間100万円の利益を得られるとします。

 A社が駐車場を大型化してB社が現状維持の場合は、A社の年間利益が150万円に増えて、B社の年間利益は70万円になるとします。

 逆に、A社は現状維持で、B社が駐車場を大型化した場合は、A社の年間利益が70万円になり、B社の年間利益は150万円になるとします。

 どちらも駐車場を大型化した場合は、年間利益はともに120万円になるとします。