どうすればプロジェクトの破綻を防げるか?
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 経済産業省が指摘した「2025年の崖」問題――老朽化した基幹システムの刷新が進まず、DXが停滞すれば巨額の損失が発生する。その背景には、IT投資を巡る日本企業固有の実態がある。本稿では、『全社デジタル戦略 失敗の本質』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本企業が犯しやすい失敗とその乗り越え方を解説する。

 進行中のプロジェクトが正しい方向に進んでいないとき、それをどう見抜き、どのように軌道修正を図ればいいのか?

進行中のプロジェクトにおける失敗対策

 進行中のプロジェクトが「失敗」に片足を突っ込んでいるとしたら、どのように対処すればいいのだろうか。「コスト増や期間延長を繰り返していて、どうも順調に進んでいるように見えない」と言いつつも、「自分にはITはよく分からないから」とどこか他人事で、自ら介入し対策を講じるまでには至らないのが多くの経営者の実情ではないだろうか。

 しかし、経営陣が積極的に状況を理解しようとしさえすれば、実態を把握することは可能だ。プロジェクトの若手メンバーがまずい状況だと愚痴をこぼしたり、ベンダーからも「本当にこのままで大丈夫ですか」という声が漏れ聞こえたりしてくれば、そこには必ずリスクがあるし、多くの場合、現場の感覚は正しく、経営として介入すべきまずい状態に陥っている。

 一方でプロジェクトからは、公式には現場の感覚とは異なる化粧がされた報告が上がってくるので、プロジェクトからの報告をうのみにせず、第三者目線で検証し、検証結果を踏まえて軌道修正したほうがよい。

 その際には、経営とITという2つの目線を持つ必要がある。これまでも述べてきた通り、まず経営面では、プロジェクト責任者はなんとかシステムをリリースさせようとするので、目的や効果の意識が薄れ、本来実現すべき内容を矮小化してでもコストと期間を厳守しようとする。

 したがって、当初の目的やROI、対象としたスコープがおざなりになっていないか、経営側はしっかり点検しなくてはならない。IT面については、純粋にプロジェクトの進捗、品質、コスト、期間について、ベンダーもしくはプロジェクトから上がってくる報告を盲信せずに評価することが重要となる。